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2005年5月10日全文
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2005年5月10日全文
162-参-法務委員会-17号 平成17年05月10日
○千葉景子君 民主党・新緑風会の千葉景子でございます。
今日は三人の参考人の皆さんにもう何か大変ずっしりと感ずるいろんな御意見をい
ただいたこと、本当に心から感謝を申し上げたいと思います。
今回の法案、私も大きな前進であろうとは思いながらも、今のお話をお聞きをしな
がら、これからまだまだ深め、あるいは新たに考え、検討をしていかなければいけな
い課題がまだまだあるんだなということを改めて感じさせていただいた次第でござい
ます。そんなことを念頭に置きながら、また更なる御意見をお聞かせいただければと
いうふうに思います。
まず、藤本参考人、鴨下参考人、お聞かせをいただきたいと思いますが、先ほどの
お話の中で藤本参考人は、国際的な観点も対比をしながら、日本の刑務官の担当制の
問題、非常に日本的な制度ではありながらも、これが本当に一人の刑務官の中でうま
く機能するんだろうか、その処遇と保安という面がですね、そういう御指摘がござい
ました。また鴨下参考人も、お書きになったものの中に、やはり刑務官が規律秩序維
持と処遇の両方の職務を同時に併せ行う、この二重構造が非常になかなか難しい点だ
という御指摘をされておられます。
改めてこの点について、どのような仕組みといいましょうか、システムにすること
が一番適切とお考えか、その辺について御意見がございますればそれぞれお聞かせい
ただきたいと思います。
○参考人(藤本哲也君) それでは、先生のお答えになりますかどうか分かりません
が、今の担当制の問題ですけれども、そもそも、日本の行刑の特色として私は担当制
を挙げましたが、これはやっぱり日本の伝統的な家族、家族構成ですね、我々はこれ
を間柄主義とか間人モデルという言葉を使うんですが、こうしてそで擦り合うも他生
の縁と、知り合った仲で何とかお互いにそれなりの目的を達していこう。アメリカは
すべて契約契約で、契約の下で監獄も運営されますから、すべて契約違反で処罰がで
きるわけですね。そういう意味では、我が国は契約という概念ではなくて何となくあ
いまいな中での処遇が展開されてきたと見てよろしいと思うんですが、それは、監獄
法そのものが非常に大綱だけを定めて細かい規定がなかったと、わずか七十三条ぐら
いの条文ですから、そういうことがあったからかえってかなり柔軟に対応できたと思
うんですね。
その担当制の非常に意味があると思いますのは、職員とそして受刑者との間でのお
互いの信頼関係を築くということなんですね。ただ、問題なのは、こうした日本的な
パターナリズムといいますか、温情主義といいますか、あるいは家父長原理と言って
もいいんですが、そういうものが働いてくるときに問題が起こるのは、一人の職員が
見れる限度は三十名ぐらいなんですね。我々が大学で指導できるゼミの学生が二十名
ということになっていますが、人間が大体相手に対して指導できる限界というのがあ
りますので、それが過剰収容になってこれは六十名になってくる、七十名になってく
るとほとんど目が届かなくなってくると。そうすると、今までは担当さんがきちょう
めんに面倒を見たという集団の中では問題は起こらなかったのに、そこから外れてく
る人が出てくる。そうしますと、人間ですから、その外れた者へ担当は、そちらの、
こいつはいけない、違反だけすると、自分の担当制の中では非常に邪魔であるという
意識がどこかで感じた場合には、受刑者たちがその人を排除してしまうといういじめ
の構造が起こってくるわけです。
これが恐らく今の刑務所の中において問題が大きくなって担当制そのものに問題が
あると言われている点だと思うんですが、それはそもそも、我々、一人の人間が対応
できる受刑者の数は限定されているということをまず考えなくちゃいけないというこ
とと、同時に、保安とそして処遇という両方の相矛盾するものをやらなくちゃいけな
いという義務を負わされてきた。
それはそれなりに、我が国は研修制度があって、先輩からのノウハウをずっと持ち
ながら今まではやれてこれたんですが、だんだんに新しい職員がサラリーマン化して
くると、刑務所の中で自分が受刑者を改善更生して社会に出すんだという教育力で感
化するという面ではなくて、サラリーマンとして入ってくる側面が強くなってきてい
ます。私は、今、矯正研修、府中の矯正研修所で二十五年間そういう看守の方たちを、
授業を刑事施設が教えているわけですから、直接の交流から感じたところもそうです
けれども、やはりかつてのように、すべてを受け入れて自分で判断して自分の能力で
処遇するという方が少なくなってきたような気がするんですね。
その辺りに担当制の問題点が出てきたようですから、今先生のおっしゃった、結論
は何、どういうふうにすればいいかというと、学校でのチームティーチングのように
ペアを組んで、一方が保安、一方が処遇ということになればいいと思うんです。ただ、
アメリカのようにこれをきちっと分けますとまた問題が起こってきますので、今回の
法律案の中では専門的知識を活用するとございますから、これを活用することによっ
て処遇というものを、専門的知識を持っている心理学、社会学、教育学あるいは医学
を専攻した人たちがこちらを主にプログラムを考えて処遇する、保安の面で従来の担
当制とチームワークを組んで対応すれば、今回の法律案が法律になったときに運用が
可能ではないかと私は思っています。
○参考人(鴨下守孝君) また実務的な観点から申し上げますと、先ほどから例に出
している府中刑務所の例でいきますと、例えば七十人を受け持つ工場、昔であれば累
犯、B級と言われている累犯受刑者だけ七十名いた工場が大半でした。最近では、外
国人がそのうちの二割ないし三割、多いところは四割を受け持っている。さらに、精
神に障害のある人も、寛解状態のときには単独室に入れておくばかりではなくて工場
にも出します。さらに、身体に障害のある人あるいは高齢者も集団処遇にできるだけ
出さないとぼけが始まるということがありますので出しております。それから本来的
な累犯の受刑者と。
それだけの多種類の受刑者を一人の担当職員が全部見れるかというとなかなか難し
いということで、私が施設を預かっていたときには、精神科医、もちろん先ほどお話
が出ていました精神科医もおりますし、心理の専門家もいる、それから外国人の処遇
の専門家もいる、それと工場の担当職員がチームをつくってそれぞれの問題に対応す
るということで、もう既に、これは平成八年ぐらいから高率収容が始まっております
けれども、どこの施設でももう一人の担当職員ではどうにもならない状況になってき
たということで、先ほど藤本参考人も説明されておりましたチーム行刑あるいは組織
行刑ということはもう既に始まっております。そうしなければ対応は難しくなってい
る。
分類処遇制度というのがありまして、それぞれ等質のグループ化をするんだといっ
ていても、現実のこの高率収容が続いている限りはそういう単一の処遇集団はなかな
かできにくい状況がありますので、今申し上げたようなことでやっている。そのため
には、もっと全国の施設に先ほどからお話が出ている専門職員、心理の専門職員ある
いは精神科医、そういった人たちが配置されませんと、あるいは外国語の通訳、翻訳
ができる人が配置されませんと処遇は非常に困難になってくるというふうに思います。
○千葉景子君 ありがとうございます。
次に、黒田参考人にお聞かせをいただきたいというふうに思います。
大変難しい問題だということがよく分かりました。本来であれば、医療、精神医療
に対する新たな仕組みというんでしょうか、そういうものも必要なのかなという感じ
がいたしますが、できる限り今の制度の中でもより良い医療といいますか、それがで
きるように考えていかなければいけないと思いますが、一つ、やはり精神医療の場合
に、受刑者が施設内で先生方などの力で医療を行われている。ただやっぱり、釈放さ
れてから、そこのつなぎといいましょうか、その釈放後との関係がなかなかうまくい
かないというお話も伺います。それが、先ほど、また次のその本人の不安なりいろん
な障害にまたかかわっていくということもあるんだと思うんですね。
その辺についてはどのようにといいましょうか、問題点と、それからそれに対する
対処法というので何かお考えがございますれば、お聞かせいただきたいと思います。
○委員長(渡辺孝男君) 黒田参考人、少しマイク近くでお願いします。
○参考人(黒田治君) はい。
今先生おっしゃられた点は非常に重要な点だと思います。それで、刑事施設の中で
精神障害の治療をしている方が刑期が満了して釈放される段階でどういう道筋がある
のかということなんですけれども、その病気が非常に重い場合は、精神保健福祉法と
いう法律の中に矯正施設長通報という制度がありまして、釈放される時点で、その帰
住先の都道府県に対して、これこれこういう病状の方が釈放されますということを通
報します。それに応じて、それを受けたその都道府県の方で措置入院ですね、自傷他
害のおそれがあるかどうかということの判定なんですけれども、措置入院の必要があ
るかどうかという判断をして、措置入院に該当すれば精神科、精神病院の方にそのま
ま移行して入院継続されるという制度があります。
ただ、そこで問題になるのは、その措置入院というのは、精神障害があって、その
せいで自分自身を傷付けたり他人に危害を加えるおそれが確実にあるかどうかという
ことが一つのその選別の基準になっていますので、そこまでその危険性が切迫してい
ないケースの場合、治療によって非常にいい状態を維持できているけれども、例えば
自分が病気だという認識がないので、社会に出てしまうとすぐに医療を中断してすぐ
に悪化してしまうようなケースの場合はそういう制度から漏れてしまうことが多々あ
ります。
そういう場合に、本当に望ましい姿というのは、その地域の精神保健の当局である
とか、あるいは生活が難しいケースであれば福祉ですね、そういったものも含めて、
うまくその地域にバトンタッチできるような連携が取れないかということを考えます。
法律的にそれを取り決めているものはないんですけれども、運用で何とかやれる領域
ではないかというふうに考えます。
○千葉景子君 鴨下参考人にお伺いいたします。
いろいろ実務の経験もお持ちで、大変御苦労も多かったことであろうかというふう
に思いますが、今、大変過剰収容状況があって、その中で、要するに独居拘禁と集団
的拘禁、これが本来どうあるべきかという問題についてのお考えを聞かせていただき
たいと思うんです。
本来は集団処遇で、で、むしろ独居にするのはいわゆる厳しい措置という側面があ
るんですが、今はそれが逆転しているような、そういう状況もあると。これは、その
処遇の観点から考えて一体どちらに向かって進んでいくべきなのか、その辺はどんな
ふうにお考えでしょうか。
○参考人(鴨下守孝君) 現在のこの古い法律の下でも、受刑者処遇は、恐らく昼間
は集団処遇、夜間は単独処遇というのが理想であったのではないかと思います。ただ、
いろいろ国家予算等の関係もありまして、施設を造るときには、今、新しい施設でも
単独室が五〇%、共同室が五〇%というような比率になっているかと思います。
千葉委員お話しのとおり、昔は、単独室に入るということは非常に不利益を受ける
んだといって嫌がるというか、あるいは不服申立ての対象にするというケースが非常
に多かったのが事実です。最近は、むしろ単独室に入れてほしいという受刑者の方が
多い。要するに、いろいろ社会がそうなのでしょうけれども、いわゆる共同生活ある
いは集団生活というのを非常に嫌がる傾向が見えます。ですから、順番待ちで、単独
室に入るのを順番を待っているというのが今どこの施設も常態的なことだと思います。
本来は、やはり昼間はやっぱり集団処遇、夜間は単独室の処遇、こういうのが理想
だろうと私は思いますが、そうはいっても、このような今の高率収容がまだ当分続く
とすると、そんなことはとても言っていられない。単独室にも二段ベッドを入れれば
二人の処遇になりますから、結局、単独処遇をやる人というのは、保安的に非常に問
題があってどうしても二人では無理だと、あるいは共同室では無理だという人に限ら
れるような感じがいたします。それ、できるだけ新しい施設では単独室の割合を、比
率を増やしていくという努力が必要かと思います。
○千葉景子君 もう限られた時間ですので、あと一点鴨下参考人にお聞かせいただき
たいと思います。
先ほどのお話でも、社会復帰に向かっての処遇というのは受刑者にとっても権利で
もあるというお話でございました。そういう意味で、この施設内での処遇、そして社
会内へ復帰をする、そこの橋渡しといいましょうか、そこの部分がやっぱりきちっと
していませんと、本当の意味での社会復帰、なかなか難しいと。
例えば、先ほどお話がありましたように、刑務作業というのが本当に社会復帰への
一つの大きな足掛かりになるんだろうか、あるいはそこで得る賞与金などもあの程度
でいいんだろうかとか、それから、今度は社会に出ても就業先がなかなかなくてまた
再び犯罪に走ってしまうと、こういうようないろんな問題があると思うんですが、そ
の辺の、せっかく施設内で処遇をしながらも社会に復帰をするその条件というものが
大変乏しいと。こういう点などについて、簡単で結構ですので、何か御指摘があれば
お聞かせをいただきたいと思います。
○参考人(鴨下守孝君) 現在、非常に身体、心身ともに健全なる人であれば、この
法律案にも規定がありますが、出所時の指導、援助のところで、現在も就職の相談あ
るいはいろいろなハローワークや何かの人たちに来ていただいて就職についての指導、
こういったことはどこの施設でもやっています。ただ、実際に就職までということに
なると、なかなか時間がない。就職が決まって仮釈放になる人というのもなかなか今
は少ないというふうに聞いております。
そうすると、その後がどうなるのかということ、先ほどもちょっとお話ししました
が、再犯率、再入率も、社会にいる間はよく私たちには分からないと、行刑施設の者
は分からない状況がある。そういう意味での情報がもっと必要だろうし、また施設の
中の情報を社会の方にも伝えていく、そして協力を得るということが必要になろうか
と思います。
特に私たちが今実感として持っているのは、高齢者が増えてきている、この人たち
に社会復帰といってもなかなかうまくいかない。かといって、福祉施設に一般社会で
も順番待ちのところを刑期が終了したから取ってくれというわけには、なかなか難し
い問題がある、そういったところ。それから、地方自治体が今福祉の関係をやってお
りますが、財政的にも非常に負担が大きいというようなことも聞いております。そう
いったことを、社会復帰までのことをもっと一体のものにするためには、もっとこの
強力な関係が取れるような制度の見直しが必要だろうというふうに思います。
精神障害のある人ももちろんそうなんですが、先ほど出ていましたけれども、措置
入院の申出をしても、例えば府中刑務所の場合は一〇%行きません。百数十人申出を
してもほんの数人しか措置入院はできない。そうすると、あとの人たちは表門から出
さなきゃいけない。その人たちがどこに行って何をするかということに非常に不安を
感じているのが今の行刑の施設の職員だと思います。
そういった意味で、そのつながり、一番求めているのは行刑側だろうというふうに
思っています。何かその辺がうまくいけば、今以上にいい結果が出ると思います。
○千葉景子君 ありがとうございました。
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