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2005年4月12日全文
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2005年4月12日全文
162-参-法務委員会-11号 平成17年04月12日
○千葉景子君 おはようございます。民主党・新緑風会の千葉景子でございます。
今日は、船舶、よく分からないですね、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律
ということでございまして、その質問に入る前にちょっと一、二点、大臣の御認識等
お聞かせをいただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いをしたいと思い
ます。
記憶に多少遠くなってはおりますけれども、心神喪失者医療観察法、この施行が法
によりまして今年七月十五日に予定をされるということになっております。この法律
の審議経過等は、知っている方は知っている、よく委員会等にかかわらず御存じない
方もあるかもしれませんけれども、大変な議論の結果成立をしたという法律でもござ
いました。この七月十五日、もうあとそう時間はないわけですけれども、このところ
新聞等を拝見をいたしますといろいろな報道がなされておりますが、どうもこの施行
までに医療施設の準備が間に合わないんではないだろうか、こういう指摘がなされて
おります。
この施設の整備につきましては、元々、専用の国立の病院を八病院、そして都道府
県立の病院十六病院程度新設をしてこれに対応していこうと、スタートのときにそれ
がすべて間に合うかどうかは別でございますけれども、そういう方向で準備をしてい
こうということだったんですが、どうも今のところは大変地元の反対があるとか、あ
るいはなかなかこの整備が進まないということで、本当に医療施設としてはまだ国立
の三か所程度しか準備ができない、できていないと、こういう報道がなされておりま
す。
これは法務省、そして医療施設等は厚生労働省ということにはなるんでしょうけれ
ども、この法務委員会で、池田小学校の事件等を踏まえながら、犯罪の防止等々も念
頭に置きながら心神喪失者の社会復帰等を図っていこうと、こういうことで作られた
法律でございます。
大臣、どうでしょうか。今こういう報道等がなされておりますけれども、一方の管
轄をなさっている大臣として、この今の実情はこのとおりなんでしょうか。どういう
ふうにまず御認識をなさっておられるか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) 本当に心配いたしております。先生も御心配いただい
ておりますが、この法律自身が難産であったかなというふうに思っておりまして、そ
の後も、期限が七月十五日までということでございますので、なるべく安産に持って
いきたいということでお話合いをさせていただいてはおりますけれども、御指摘いた
だいております心神喪失者等の医療観察法については、現在、期限である七月十五日
までの、この施行に向けて鋭意準備をやっているということをまず御報告したいと思っ
ております。
厚生労働省が進めております指定入院医療機関の整備につきましては、その作業が
難航しているものも少なくはないと聞いておりますが、法律の円滑な施行のための必
要な数の病床数、これがなかなか難しいと。これも引き続き厚生労働省とともに十分
協議しながら、この円滑な施行に向けて必要な準備を行ってまいりたいと思っており
ます。
先生が御指摘なられましたとおり、当面、段階的に約七百床程度が欲しいというこ
とでございまして、それを目指しておりますけれども、地域の住民の方々の御理解が
なかなか得られにくいということでもございます。また、平成十七年度中に三病院、
これは九十床程度を確保する見通しが立っているというところにとどまっているのか
なと思っております。
○千葉景子君 今のお話ですと、この新聞報道等がほぼ実情を誤りなく示しているの
ではないかというふうに思います。まあ、一生懸命といっても、もうあとそんなに時
間はないわけでして、本当にこれがちゃんとスタートできるんだろうか、こういうこ
とを本当に懸念せざるを得ません。
実は、この法案の成立までというのは、今大臣がおっしゃいましたように、大変な
難産でございました。私も一緒に審議をした者とし、この審議の経過をちょっと振り
返って整理をさせていただきましたんですけれども、まず法律が、政府案が閣議決定
されましたのが、これは二〇〇二年です、二〇〇二年の三月ですね。それで、国会に
直ちに提出をされまして、衆議院の委員会から議論が始まったということです。これ
が二〇〇二年ですよね。それで、その後審議が百五十四通常国会で行われて、そこで
の、衆議院では十六時間四十分の審議がなされた。それで、また今度はそれが引き続
いて継続になって、百五十五臨時国会、ここでまた十五時間以上の審議がなされて、
このときは、衆議院の方は欧州視察等もされて、この法案の、本当にいい法案にしよ
うという議論がされた。これが参議院に、百五十五臨時国会の終わりに参議院に送ら
れまして、その百五十五臨時国会、それから百五十六通常国会へと審議が移り、参議
院でも大変長い審議時間、参考人の御意見を聴き、そして連合審査を重ね、そして、
まあ私ども民主党はこれには反対の姿勢でございました。こういうやり方ではなくて、
従来の精神医療をもっと充実させるということによって対応すべきだという、こうい
う姿勢は持っておりましたけれども、しっかりとこの審議に臨み、そしてできるだけ
の納得いくものをつくっていこうということで対応させていただきました。
ただ、残念ながら、これは最終的には、参議院の場で審議が打切りの動議という形
で打ち切られて、そして採決に至るということになったわけですね。これについては
当時の委員長も大変御苦労をなさったと、もう本当私も心痛く思ったりはするんです
けれども、本当にそういう経過を経て、大変これは重い内容を持った法案としてスター
トをしようとしている。
これだけ長い時間を掛けて議論をし、そしてそのためには、当然、この医療施設の
充実といいますか、準備が必要だということもそのときから当然予測をされてきたわ
けです。にもかかわらず、ここへ来て、結果的には、周辺の賛成が得られないとかそ
ういうことで医療施設の準備ができないというのは一体どういうことなんだろうかと。
全く先の本当に見通しとか、それからそれに対する、本当に一生懸命に対応しようと
いう、本当にそういうことがあったんだろうか。何かそのときの社会状況の中で、い
や、これそういう医療施設を造って、心神喪失者、そしてそういう人の犯罪というも
のに対して、やっぱり何かしないと社会からの非常に批判が高まるということで何か
行われてしまったのではないだろうかとも、結果的には懸念せざるを得ない。
これ、こういう中でどうするんですか。このままじゃ大変無責任だと思うんですね。
一体、その今準備というか、懸命にやっておられるとはいいながらも、これからもう
あと限られた時間で一体どうされるのか。何にも準備ないままにスタートするのか、
いや、そうじゃないのか。その辺については多分、厚生労働大臣とも今いろんな御調
整なりあるいはお話をされておられる、当然のことだというふうに思いますけれども、
一体これどう対処されるおつもりなのか。
今頑張っておりますと、これだけじゃもうとても間に合いませんし、そんな無責任
なやり方では、私たちはちょっともう本当に今後の審議、特にこの国会では、一方で
は刑事施設に関しての法案が審議をされる。一方ではそういう形で刑事施設の処遇に
よって犯罪を防止し、そして社会への新しい復帰を促していこう。片方では心神喪失
という、そういう精神的な状況にある人については、この医療の中で犯罪に及ぶなど
ということを抑止して、そして社会復帰を果たしていこうと。まあ、ある意味では両
方がやっぱりきちっと相まってこそ目的を達成するという部分もあるわけですので、
そういうことを考えますと、この成り行きというのは非常に影響が大きいというふう
に思うんですが、大臣としてはどういうふうに対処をすべきだというふうにお考えで
おられるのか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) 先生御指摘のとおり、大変難航している課題であろう
と思います。そういう意味では、指定入院医療機関の整備、これは厚生労働省の方で
今懸命に努力されているものと承知いたしておりますので、更なる整備の方向の在り
方ということも見定めていきたい。
法務省といたしましては、厚生労働省とも十分協議をしながら、その法的な円滑な
施行に向けて必要な準備をしてまいりたいと思っております。公立病院の協力、そう
いうことも視野に入れながら、しっかりとこのベッドの確保に向けて協力していこう
というふうにも思っております。厚生労働省も取り組んでおられますので、法的な分
野について我々は一生懸命頑張っていこうと思っております。
○千葉景子君 今、もう再三申し上げますけれども、一生懸命頑張って、本当にでき
るんですか。そう、大臣、思っておられます。
いや、それで、この報道などでは、医療観察法施行前の改正みたいなことを検討し
ているんではないかという、そういう報道などもされているわけで、もし施行前にま
た改正などということになったらこれは本当にとんだことでしてね。いや、私は、本
当にこれは明確に今後の方針をきちっと示していただかなければ、いや、頑張ります
という、これだけではとても私は納得をするわけにはまいりません。
是非、これはまたこの委員会、継続をいたしておりますから、その都度ぐらいに、
一体どうするのか、どうするのか、どうなったのかと確認させていただかないことに
は、だって、国会としてもそういう意味では責任を果たせないわけですよね。法案を
作り、そして施行しようということで、立法化を私どもも責任を負っているわけです
ので、そういうことを考えますときには大変私はもう懸念しておりますので、改めて
また聞かせていただく機会あろうかと思いますので、今日はこの程度にさせていただ
きたいというふうに思っております。
さて、本題といいましょうか、の方に入らせていただきたいというふうに思います。
既に吉田理事の方からも御質疑がございまして、多少重なる部分があるかもしれま
せんが、ちょっとお許しをいただいて、確認を含めて御質問をしたいというふうに思っ
ております。
心神喪失の関連の政府参考人の方は御退席くださっても結構でございます。
さて、この船主責任制限法でございますけれども、これは私、一番ちょっと分から
ないのは、今なぜ、何で、どういう理由でこの改正なのかなということです、この国
会でですね。
というのは、大臣の提案理由説明をお聞きをいたしました。そこでは、この法律が
成立後既に三十年近く経過をして、そしてその間のインフレーションの進行等によっ
て現在の社会経済の実態にそぐわなくなる等の問題が生じていると。まあこれは確か
に、分かったような分からないような文言でございます。もしそういうことであれば、
別にこの国会ということではなくして、三十年の間にそういう動きというのは徐々に
流れてきているわけですので、それが今やらざるを得なくなっているというのは一体
どういうことなんだろうかということが一点でございます。
それからもう一点の理由というのは、この今回の一九九六年の議定書、この締結の
承認案件と併せてということになるんだろうというふうに思うんですけれども、この
前の一九七六年の条約締結の際のこの責任制限法の改正は、割と条約締結とこの改正
が非常にスピーディーにといいますか、いろんな背景があったと思うんですけれども、
行われております。ところが、これに比べまして今回は一九九六年ですからね、議定
書が。それから九年経過をしているわけです。そうすると、既に条約自体は二〇〇四
年の五月に発効しているということで、採択から九年たっている。社会経済状況とい
う実態にそぐわないというのは、まあそれは当たり前の話でして、そういう理由と併
せても、何で今、どういう理由でこの改正に至ったのかなという思いがいたします。
もっと早くやるべきだったのか、あるいはさほど、これだけ放置していて今になっ
ているんだからそう改正するほどのものでもないのか、その辺の、この本法案の改正
の理由と、それから今の時期にやっぱりやる意義、意味があるんだというところを
ちょっと分かりやすく御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君) 御指摘のとおり、この分野が仮に法律の規定として不
合理であれば、スムーズにこれを直すというのが私ども政府の使命でございますので、
常日ごろから、この船主責任制限法について限度額がどうかということは絶えず意識
しているところでございます。
ただ、この分野は、何と申しましてもこの五七年条約、その前に更に条約があった
わけでございますけれども、国際協調というのが第一の観点でございまして、これを
抜きにやはりこの問題の規律を改めるというのはなかなか難しいところが、これは実
務上もございますし、また実際上も、政治上もいろいろ困難な問題になるわけでござ
います。したがいまして、私ども、どちらかと申しますと、この間、五七年条約が必
ずしも、あっ、失礼、七六年条約ですね、七六年条約が必ずしも十分でないという意
識は持っておりまして、この分野では、国際海事機関、IMOというのがこの問題を
処理している国際機関でございますが、国際機関の場においても様々な努力をしてい
たわけでございます。
実は今回、限度額の引上げと併せまして、旅客についての責任というのは責任制限
の対象から外すということになりましたのも我が国の提案によるものでございます。
そのように提案はいたして、いろいろ交渉はいたしていたわけでございますが、なか
なか九六年までそれがまとまらなかったというのが実情でございまして、まとまった
以上は私どもは、逆に申しますと、早くこの条約が発効してくれて、それに我が国も
率先して締約国として入ろうという考えでおりました。
しかしながら、これは、先ほど委員も御指摘のとおり、昨年まで実は発効がされな
かったわけでございます。発効される前に、この前の七六年条約と同様に、この条約
に入って前の条約を破棄するということも全く不可能ではないわけでございますが、
七六年条約においてそれをしましたのは、やはり主要海運国、イギリスでございます
とかあるいはヨーロッパの国がそういう七六年条約に入り、あるいは入りそうだとい
うことがもう既にその時点で決まっていたために、五十年代にそのようにあえて条約
に先立って我が国が条約を締結して条約に、あのスキームに合わせて法律を切り替え
たと、改正したということがあったわけでございますけれども、今回の九六年条約の
場合にはなかなか主要海運国の状況が実はつかめませんで、最近まあしかし発効もい
たしましたし、やはり我が国としては率先してそれに入ろうということで、このよう
な、九年間掛かったわけでございますが、やや遅いとお感じになるかも分かりません
が、状況に立ち至ったわけでございます。
我が国としては、逆にこういう九六年条約のスキームに多くの主要海運国が入るよ
うにむしろ慫慂するというのが今後の使命だろうというふうに考えております。
○千葉景子君 日本も海運国といいますか、そういう意味では、世界のある意味では
こういう分野ではリーダー役であらねばならないということもあると思います。今の
経過というのはおおよそ理解はいたしますけれども、今後も是非積極的な国際社会へ
の働き掛けというのが求められるものではないかというふうに思っております。
さて、先ほどこれもちょっと関連がございましたけれども、この船主責任制限の額
と、私は、実際の海難事故での実損額というのはやっぱりかなり乖離があるのかなと
いう感じがいたします。過去の事例、ちょっと新聞記事で拝見をしたものですけれど
も、福岡県沖で外国船舶と漁船が衝突して、死傷者を伴う十数億円の被害が出るとい
うふうな大事故が起きたけれども、この船主責任制限法という制限額というのがどう
しても頭打ちになって、結局三億八千万円の損害賠償金で示談が成立をしたというよ
うな事例もあったようでございます。
こういうことを見ると、どうしても実損は相当あるんだけれども、この責任額で頭
打ち、その範囲で示談が成立をするという、そういう例が多いのかなと。ただ、零細
な漁業者等は大変それによってつらい思いといいますか、厳しい条件を迫られるとい
うことになってしまうのではないかというふうに思いますけれども、その辺の実際の
実損額と責任限度額との乖離みたいなものというのはどんな状況なんでしょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) 先ほども吉田委員の御質問に対してお答えを申し上げ
ましたように、実際にこの責任制限手続に申立てがあって入るケースは全体の、この
ような船の損害が問題になるケースのごく一部でございます。それで、圧倒的多数は、
今委員も御指摘のとおり、保険会社との交渉によって決まるということでございます
が、その場合の保険会社、先ほど申しましたようにこれはPI保険と申しております、
具体的に日本の場合は日本船主責任相互保険組合が行っております保険でございます
が、それの保険金の支払件数というのは全体で八千件から九千件ございます。そのう
ち、損害額が実際にこの船主責任制限法の定める限度額を超えているために保険金が
制限されるというのは、ほんのわずかで〇・一%程度でございまして、圧倒的多数は
保険の枠内でカバーされているということでございまして、ただ、非常に大きな事故、
有名な事故になりますと、先ほども委員が御指摘になられましたように、実際に責任
の制限の限度額に引っ掛かってくるというケースがあると、こういう実情でございま
す。
○千葉景子君 やっぱりその実損額が大きいときになかなか、やっぱり保険でもどう
しても保険金額の上限で切られてしまうというようなことになると、なかなか本当に
零細な、あるいは小さな漁業者等などは大変厳しいことになるのかなという感じがい
たしております。
そういう状況の中で、先ほどもお答えがありましたけれども、これ、船主責任制限
法で裁判による申立ての手続というのが作られているんですけれども、これはほとん
ど、何か余りこれに係る事例というのは少ないようです。結局、あれでしょ、ほとん
どが保険と、それを使った示談交渉といいますか、和解というような形でこの船主責
任というのは解決をされているというのが実態なんでしょうか。そうすると、一体こ
の法律の意味というのはどこに本当にあるのか、なかなか今度は分からなくなってし
まうんですけれども、実態としては、やっぱり和解交渉で保険という中で解決されて
いるケースがほとんどというふうに受け止めてよろしいでしょうか。
○政府参考人(寺田逸郎君) そのとおりでございます。
実際は、この船主責任制限制度があるということを前提に保険が掛けられ、その保
険の限度額がこれこれであるということを前提に当事者が和解交渉をなさって、その
限度で大体和解ができるというのが多くのケースでございます。
その場合に、なぜこういう手続をわざわざ設けるかというと、今のことから逆にお
分かりになりますとおり、この限度額がなければそれは言ってみれば青天井というこ
とでございますが、その場合には保険金額というのもやはり青天井を前提に掛けなきゃ
いけない、非常に莫大な保険料を支払うということになりかねないわけでございます。
そのようなことからこのような責任限度額を設けているというのが国際的な一般的な
理解でございます。
○千葉景子君 この責任限度については責任制限阻却事由が設けられております。こ
れについて具体的にどういうケースが適用例として挙げられるのか、具体的な例とか
ございますれば教えていただきたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君) この今の船主責任制限法の三条の三項は、七六年条約
に入りました際にその七六年条約のスキームに合わせて規定していったものでござい
まして、具体的には、「損害の発生のおそれがあることを認識しながらした自己の無
謀な行為によつて生じた損害に関するもの」ということになっております。これは我
が国の法律の規定からしますとやや理解が難しい規定でございまして、無謀なという
のは英語のレックレスリーということの翻訳でございますが、我が国に当てはめてみ
ますと認識ある過失あるいは認識ある重過失に近い概念でございます。
具体的には、損害発生のおそれの認識あって、その認識の下では普通の人ならそう
しないことをあえて無謀にもやってしまうということでございまして、具体例はなか
なか、裁判上問題になったケースが日本ではございませんので難しいことでございま
すが、非常に天候が悪い、もう普通ならば船を出さないのにあえて船を出してしまう、
あるいは全く能力のないような船員というのを配置して航海に出てしまうというよう
なことが考えられるわけでございます。
○千葉景子君 先ほどからこの責任制限、船主責任というのがなかなか裁判例には挙
がってこないということもございますので、この責任阻却事由のようなことも、なか
なかこれで裁判が争われるというふうな具体例は余り考えられないんだろうなという
ふうに推測はいたしますけれども、こういうものが適用されるようなことが逆に言え
ばあっては困るわけで、是非そういうことを望みたいというふうに思っています。
今回は旅客に関する責任制限が撤廃をされました。これは、やっぱり人命というこ
とを考えますときには大変重要なところだろうと思います。荷の方はいろんな今度は
貨物に掛ける保険等も考えられますので補てんがしやすいかと思いますけれども、やっ
ぱり人命ということになるとなかなかそれは重いものですので、こういう責任制限が
撤廃をされるという意味合いは大きいと思いますが、この至った経緯といいますか、
それから意義について改めて確認しておきたいと思います。
○政府参考人(寺田逸郎君) これは元々、この旅客に関する損害というのは契約責
任でございますので、その契約責任を責任制限するというのは、不法行為の損害を責
任制限するというのはやや異例のことであろうというふうな認識はそもそも私どもは
持っております。したがいまして、前回、七六年条約を締結した際に、せめて国内の
旅客の海上運送による旅客の債権についてはこの責任制限の対象から外そうというこ
とで、現行法はそのようになっております。これは、条約上、もう全く国際的な要素
がないことについては国内法で決められるということが決まっていたからそのように
したわけでございます。
しかし、国際運送、例えば日本から韓国なり日本からアメリカというような運送に
おける旅客というのはほかの責任制限とは別個の責任制限ではございましたけども、
しかし責任制限はできるという規定は、それは国際条約上決まったので維持せざるを
得なかったわけであります。ところが、この七六年条約を締結した以後、様々な国際
会議の際に、我が国といたしましては今のような我が国の立場も御説明して、せめて
旅客については責任制限の対象から外そうということで様々交渉をいたしまして、そ
の結果、各締約国において旅客の損害債権については独自に責任限度額を決められ、
つまり普通より上の責任限度額を決められ、あるいは全く責任制限をしないというこ
ともこの九六年の議定書によって可能になったと、こういういきさつがあるわけでご
ざいます。
○千葉景子君 私も不思議に思いますのは、その議定書によってそれぞれの各国でそ
ういう取扱いをといいますか、そういう制度を取り得るということで、国際社会の中
で議定書そのもの、あるいは国際社会全部が本当はこういう旅客に対する責任制限を
撤廃をすると、責任制限はしないということになるのが本当は一番いいんだろうなと、
人命を尊重するという意味ではですね、と思いますが、それでも我が国がきちっとこ
ういう責任制限撤廃という方向を取られて、国際社会にもさらにその考え方を発信を
していくということでございますので、是非これからも頑張っていただきたいという
ふうに思います。
さて、時間がなくなってまいりましたので。
今、何点かお聞きをしてまいりました。この船主責任制限制度というのは、一体こ
れからどういうこの法律というのは機能していくのかなと。先ほどくしくもお話があっ
たように、これがあればこそそれを基準にした保険がつくられ、そしてそれによって
損害が補てんをされる、救済をされていくということで、私も、何か保険制度もでき、
そうなるとこの法律、それから裁判で損害賠償といいますか、責任が追及されるとい
うようなケースもそう多くないと、申立て手続のようなものは余り何件もないという
ことになると、この法律というのは一体今後どういう位置付けで、それからどういう
機能を果たしていく法律になっていくのかなという感じがいたします。保険制度があ
ればもうそれで十分なのかなと思いますけれども、先ほどのように、そうすると保険
が青天井になってしまうというおそれもあるということですので、今後の、この船主
責任制限制度の今後の方向性ですね、それについてはどんなふうにお考えでおられる
のか。今度の改正そのものは私も是とさせていただきたいというふうに思っておりま
すけれども、大臣としてはどんなふうにお考えでしょうか。それをお聞きして終わり
たいと思います。
○国務大臣(南野知惠子君) 今回のこの船責法、これは単に責任限度額を定めるの
みではないと、責任制限手続を定めている法律でもありますと。責任制限手続は、多
数の被害者及び多様な損害賠償、これが関与してきます船舶事故におきましては、責
任限度額相当の基金をそれぞれの被害者の債権額の割合に応じて公平に分配しようと
いうような集団的な債務処理の手続でありますということでございまして、このよう
な手続の存在意義というのは、これは現在におきましても従来と同様に存続していき
たいものであるということにおきまして、実際に機能しているところでありますので
この法律の改正と、これは大切にしていきたい課題の一つでありますので、是非この
法案、船責法というのは改定していきたいものだと思っております。
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