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担保物権と民事執行制度の改善のための民法等改正案についての質疑 法務委員会
2003.07.22

発言者 担保物権と民事執行制度の改善のための民法等改正案についての質疑
千葉景子

おはようございます。民主党・新緑風会の千葉景子でございます。

今日は、担保・執行法にかかわる質疑をさせていただきたいと思いますが、冒頭、一言だけ意見を述べさせていただきたいと思います。

と申しますのは、この法務委員会も本当に、それぞれの委員の皆さんも含めまして、休みなく精力的な審議を続けておりますが、いかにせん今回のこの担保・執行法に関しましても、今、趣旨の御説明をいただきまして直ちに質疑を始めなければいけない、こういう異例の状況でございます。本来であれば、しっかりとした趣旨をお聴きをした上で準備をさせていただき、そして中身の濃い議論を重ね、後から悔いの残らぬような、そういう議論をすべきところではないかというふうに思っております。

これも、一つは、今、大変大きな問題になっております司法制度改革、これが急ピッチで進められているということも大きな問題であろうと思います。民主党は、この司法制度改革についても積極的に、そして本当の意味で市民が主人公であるための司法、この確立に向けて先頭に立たせていただきたいと、こう考えているところでございまして、そういう意味で、法務委員会での議論を決しておろそかにしたいと思っているものでは決してございません。

ただ、今回の法案は、その司法制度改革にも関連はいたしますが、これは司法制度改革本部ではなくして法務省からの取りまとめの法案ということにもなり、今後これらの問題が、もう本当に今大きな時代の転換ということも含めて、大変な状況になっていくのではないかと思いますし、そしてこの委員会でも、そして国会全体としても、刑務所にかかわる行刑問題なども重要課題として一貫して議論がなされてまいりました。

そういう状況でございますので、やはり今後も、司法制度改革、そしてそれぞれの各重要な論点を含む法案、この委員会のみならず、やはり市民にとっても、こんな法律ができたのかと、自分の暮らしにこんな影響がある法案がもうこんな急ぎ成立をしていたのかというようなことになりませんように、やっぱりふだんから私どもにもいろんな情報を提供をいただきまして、やはりきちっとした議論の積み重ねが本当にできますように、是非それを私は願うところでございます。

この法案につきましても、そういう観点で、私もできるだけ多くの皆さんが心配をなさるような部分について中心に議論をさせていただきたいというふうに思っておりますけれども、本来であれば、論点は相当な部分に上りますし、そしてかなり抜本的な制度の改革ということにもなりますので、逐条的にも詰めていかなければいけない、本来、法案であろうかというふうに思っております。

そういう視点を持っているということをまず前提にさせていただきたいというふうに思いますので、今日、議論をいたします部分だけで十分だと必ずしも思っているわけではございませんので、そこを是非御承知おきをいただきたいというふうに思っております。

ちょっと前提を置かせていただきました。それでは、この法案の中身に入らせていただきたいというふうに思います。

まず、第一点、今日は私の大きな論点といたしましては、一つは、担保物権にかかわる問題で、先取特権、特に働いている皆さん、労働債権にかかわる部分が大きな一点。それから、これもう一つ、短期賃貸借の廃止。これは本当に今の賃貸借関係に大きな影響を及ぼすということでもございますので、ここをもう一点。そして、少額定期給付債権の履行確保にかかわる点。この三点を大きな問題点にしながら、多少それにかかわるあとの論点も含めて質疑をさせていただきます。

まず、担保物権の先取特権についてお尋ねをいたしますが、今回の改正で、いわゆる民法上、雇人の給料の先取特権と言われておりましたこの先取特権が拡大をされることになりました。これで実体法上は商法の規定とほぼ統一されたということになるのかなというふうに思っておりますけれども、今回の法改正、これまでも大分、働いている皆さんの、特にやっぱり労働債権にかかわるところは是非拡大や、あるいは見直しをという声も強かった部分でございます。

今回の改正のまず趣旨につきまして、雇人給料の先取特権の拡大の趣旨につきまして御説明をいただきたいと思います。

政府参考人
房村精一

ただいまの御質問にありましたように、労働債権の先取特権による保護につきましては、現在、民法の三百八条と商法の二百九十五条が規定しておりますが、その内容がいささか違っております。

まず、商法の関係ですが、これは株式会社の使用人の債権、労働債権を保護するということでございまして、保護の範囲といたしましては、「会社ト使用人トノ間ノ雇傭関係ニ基キ生ジタル債権」と、こういう具合に規定されております。これに対しまして、民法の先取特権による保護は、「雇人カ受クヘキ最後ノ六个月間の給料」と、こうなっております。その結果、まず対象が、商法が株式会社の使用人に限られるのに対して、民法はそれ以外の法人あるいはその他の会社の使用人ということになります。また、保護される対象が、民法の、雇人が受くべき給料というのは、雇用契約に基づく給料債権と解されておりますが、商法の、雇用関係に基づき生じたる債権の中には、雇用以外の請負あるいは委任のような契約形態を取っても実質的に雇用関係と認められる場合には含まれると、その範囲が広く解されております。また、その範囲も、民法が最後の六か月分と、こうなっておりますのに対し、商法ではその限定もございませんし、また給料債権以外の、例えば身元保証金の返還、こういった債権も入ると、こういうことで商法の方がその範囲が広くなっております。

少なくとも、現時点においては、債務者の方の企業形態によりましてこのような保護の範囲の差を設けるということは合理的ではないと思われますので、今回の担保法制の見直しに当たりまして、狭い民法による先取特権の保護の範囲を広い商法の範囲に一致させる、こういう考え方から今回の改正をお願いしたわけでございます。

千葉景子

今、御説明をいただきましたように、今回の法改正によりまして労働債権の保護の範囲というのが拡大をされて、やっぱり多くの働く皆さんにとっては一定の前進であろうというふうに思っております。

ただ、一体これで本当に十分なんだろうかという議論が残ります。これまでも労働債権につきましては、抵当権それから租税債権との関係で、やっぱり働いてその対価として生活の糧にしているものであるので、それを先に国が租税という形で持っていっちゃう、ようやくその残りで働いた対価が保護されるというのはいかにもひどいではないかと、こういう意見もございました。私も、やっぱり国がそういう働いている皆さんの生活の部分を尊重するという姿勢があってもいいのではないかというふうに思っております。

この労働債権については、法制審議会の中間試案などでも、一部の担保権に優先させるような制度を採用すべきでないかというような意見もございました。残念ながら、今回は一定の前進ではございますけれども、そういう議論というか、そこまでは法案としては取りまとめがされなかったということですが、この点についてはどんなふうに法務省としてはお考えになっておられるのか、お聞かせください。

政府参考人
房村精一

御指摘のように、労働債権、労働者にとって生活の基盤を成すものでありますので、その保護を図る必要があるということは一般に広く認められているところでございます。そのようなことから、この担保・執行法制の見直しの中間試案におきましても、労働債権の一定の範囲について、何らの公示手段も要さずに最優先の効力を認め、特定の財産の上に存する抵当権等の担保権にも優先するものとすべきであると、こういう意見があるという意見の紹介をさせていただいたところでございます。

ただ、この点につきましては、そういう保護を与えますと、労働債権の保護としては非常に強いものとなりますが、逆に申し上げると、登記をして対抗力を有する抵当権を持っているにもかかわらず、その後、発生した労働債権に優先されてしまうということで抵当権者が不測の損害を被るおそれもある、あるいは、それをおもんぱかって抵当権者が融資をする際に十分な融資をしない、与信額を引き下げてしまうということも懸念される、そういう御指摘もあるところでございます。

中間試案のこの意見の紹介に対しまして寄せられた意見といたしましては、もちろん労働団体からは賛成という御意見をいただいておりますが、それ以外の御意見は、やはり圧倒的にそういった懸念を示す意見が多かった。

こういうことから、法制審議会におけるその後の審議においても、やはりそのような何らの公示手段を要さずに後発の労働債権が優先するというのは無理だろうということから、今回、採用するには至らなかったわけでございます。

また、公租公課との関係につきましても、やはり公租公課の実体法上の優先権はそれぞれの法律で決まっているところでありますが、公租公課が優先債権とされております理由は、国家等の財政の基盤を成すものであり、非常に公益性が高く、公平かつ確実に徴収されるべきものであると、こういうことから、原則として商法上の債権に優先するとされていると。そういう事情を考えますと、その順番を変更するということについては相当慎重な検討が必要ではないかというようなことから、今回は、先ほど申し上げた点に限って改正をするということになったわけでございます。

千葉景子

御説明と、確かにいろんな理由あるいは御意見があることは私も承知をいたしております。しかし、法律を作る、あるいは制度を作るということは、やっぱり一つの言わば理念、あるいはどこに視点を置いて何を保護し、そして、いくのかということがきちっとしていれば、やっぱり今御指摘がありましたような問題があることは承知をいたしますが、そこを、逆に言えば、どう懸念を少しでも緩和していくのかという知恵も出てくるわけでして、これまでの、何というんでしょうね、問題点があるからできないのだという姿勢は、やっぱり私は非常に消極的な姿勢ではないだろうかなというふうに思います。

この問題は、国際的にはILO条約、特にILO百七十三号条約では、労働債権は租税とかあるいは社会保険料債権より高い順位を与えるべしと、こういう国際的な条約がございます。日本は、残念ながら、今御説明をいただいたような法的な状況でございますので、この百七十三号条約の批准ということには至っておりません。これもやはり多くの皆さんから、この百七十三号条約の批准を求める声、そしてそれをきちっと念頭に置いた法整備ということが求められているわけでございます。

そういうことでお聞きをいたしますが、厚生労働省に今日は来ていただいておりますが、このILO百七十三号条約の批准、そしてやっぱり労働者の救済、保護、そういうことを主たる仕事にされておられる労働省ですから、この点について一体どんな見解や見通しをお持ちであるのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。

政府参考人
青木豊

ILO百七十三号条約、今、委員御指摘したとおり、労働債権の保護について定めたものであります。平成四年、一九九二年に採択をされております。

これは、正にお話の中で御指摘になりましたように、この条約の中では第二部と第三部と分かれておりますが、第二部においては労働債権の保護について、我が国における各種債権の優先順位というのは国税徴収法とか民法等の一般実体法により定めておるところでありますけれども、この条約が二部において求めておりますのは、三か月以上の労働債権の優先順位を国税等の特権を付与された他の大部分の債権より高いものとするということになっております。ということで、大変な労働債権を高い順位の保護にしているというところでございます。

厚生労働省といたしましては、賃金を始めとする労働債権は、労働者及びその家族の方々の糧である、生活の糧であるということでありますことから、労働債権の保護ということは大変重要であるというふうに認識しております。

法制審議会で破産法等、倒産法制の見直しの一環としてこの優先順位の在り方について議論がなされるということでありましたので、平成十一年から研究会を開催しまして報告書を取りまとめ、その法制審でも、研究会の報告なども御紹介をしながら法制審議会における対応も行ってきたところでありますが、今回の改正に当たりましては、先ほどからのお話もありますように、なかなか、我が国の国内法制との整合性との観点からILO条約の批准がなかなか難しいということでありますが、しかし厚生労働省といたしましては、今後とも、労働債権を保護するという観点から、このILO百七十三号条約の批准に向けた環境整備というものを含めまして、適切な対応に努めていきたいというふうに思っておるところであります。

千葉景子

難しい難しいと言っていたのではまだ前へ進むというわけにはいかないので、やっぱり一つの大きな方向性を持ちながら、それをどうやっぱり前進させるために、何が問題で何を整備をしなきゃいけないのかということをきちっと整理しながら、やっぱりこれは積極的に進めていただきたいというふうに思います。

ちょっとこれはお知らせしていなかったかもしれませんが、大臣、大臣も労働法制等にも大変もう造詣が深い大臣でいらっしゃいます。こういう問題につきまして、是非、法務省そして厚生労働省、大臣同士でも積極的に協議をいただいて、やはり多くの皆さんが期待をする、そういう展望を見せていただきたいというふうに願っておりますが、ちょっと御感想ございましたら、お聞かせいただきたいと思います。

国務大臣
森山眞弓

おっしゃる気持ちはよく分かりますし、私も同感の部分もたくさんございますけれども、いざ正式に批准ということになりますと、日本の場合は常に日本の国内法との整合性ということを非常に重視いたしておりますので、その部分について問題が解決しないと、残念ながら批准という運びにはならないということは私も承知しているところでございます。

多くの働く人々が期待しているとおっしゃいましたが、正にそうかと思いますので、そのようなことで、今後も関係各省と相談しながら、できるだけ努力していきたいというふうに思います。

千葉景子

それでは次に、少し短期賃貸借にかかわる部分についてお尋ねをしたいと思っております。

現在の我が国の賃貸借、特に建物賃貸借というのはどういう状況かと私も考えてみますと、普通、民間の賃貸のマンションとかアパート、それから賃貸のオフィスビルとかテナントビル、こういうものの物件はまずほとんど抵当権が設定されているというケースが多いというふうに思います。最初から借金もせずに、あるいは借入もなくこういう物件を建築するということはもう到底今どき考えられませんので、ほとんどに抵当権が付けられていると、設定されていると言っても過言ではないというふうに思っております。

そういう物件に、今度は大多数の市民あるいは企業を営む皆さんがそこに賃借りをするわけです。そういう意味では、生活の基盤あるいは事業活動などの基盤、こういうものが、今申し上げたような抵当権がほとんど設定されている物件の上に存在をしているという実態ではないかというふうに思います。そして、更に申し上げますと、その大部分は二年とか、長くても三年程度の契約期間、それを更新をしていくということが通例でございまして、そういう意味では正に短期賃貸借として成り立っているということではないかというふうに思います。

そうなりますと、今回の改正、その是非もありましょうけれども、今回の改正というのは、やっぱり抵当権に後れる賃貸借がこれまでと異なりまして一律に対抗できないという形に改正されるわけですので、これまでそういう物件の上でもやっぱり安心して生活を、あるいは事業を継続をしていたという、その根底をある意味では大きく変更すると、大きく変えていくということにもなろうかというふうに思います。

そういう意味では、今日、冒頭に申し上げましたように、本当にこの議論がきちっと不安とかあるいは問題点等、あるいは今後の賃貸借の在り方等々を含めて本来は検討をしておきませんと、施行をされたと、ああ、こんなことだったのか、こういう混乱とかあるいはいろいろな問題を生ぜしめることになるのではないかと、そういう危惧はやはり私も否めないところでございます。

やっぱり賃貸借のこれまでの市場の大体通常の形態、こういうものに大きな混乱が生ずるのではないかと、こういう御意見もありますし、それからやっぱり一人一人の賃借り人ですね、特に生活の基盤としている、そういう皆さんにとっては本当に不安が増大をする。何か、すぐやっぱり生活の基盤が不安定になるのではないかと、こういう声は随分私も聞かせていただいているところでもございまして、そういう意味で、是非この短期賃貸借については十分なやはりこれからの検証、あるいはこの制度のもたらす問題についてのいろんな環境整備、こういうものも併せて考えていく必要があるのではないかというふうに思います。

そこで、こういう大きな変更を加えるということになりましたが、その理由としては、言わば占有屋と言われるような、そういうものを何とか解消する、排除していくということが大きなこの法改正の理由になっております。

そこで、どうなんでしょうか、この短期賃貸借制度のそういう弊害ですね、正常なものを覆してでもやっぱり変えなければいけないと、そういう実情に本当にあるんだろうか。ほとんどはやっぱり正常なというか、正当なといいますかね、やっぱり生活の基盤として賃貸借を、契約を活用しているということだと思うんです。そういう意味で、そんなに、こういう形で法律を変えなければいけないほどの弊害ということが現状としてあるのかどうか、その辺のちょっと実情をどういうふうに把握、それから認識されているのか、お聞かせいただきたいと思います。

政府参考人
房村精一

ただいまの御質問にもありましたように、この短期賃貸借、これは立法当初からその濫用による弊害が指摘されていたところでございます。

元来、抵当権は、その抵当権が設定された時点での対象物の交換価値を把握するということになりますので、その後の賃借権の設定がありましても、これは対抗できないというのが原則でございます。ただ、民法は、ごく短期間のものであれば抵当権者に対する負担も小さい、あるいは競落人の負担も小さいということから、この三年以内の、建物についてでございますが、ごく短期間の賃貸借については対抗できるものと扱うという特例を設けたわけでございますが、もちろんこれによって保護される正当な賃貸借も多いことは間違いないと思いますが、しかし同時に、これを濫用いたしまして、悪化した段階で所有者と通謀して短期賃貸借を設定する、あるいは所有者がいなくなったすきに勝手に入り込んでそういったものを偽造、書類を偽造して主張すると、こういうような形で短期賃貸借を主張いたしまして、自己の占有権原を正当化し、そのことによりまして競売等の手続の円滑な執行を妨げる、こういうものが設定されますと当然その競売物件の価格が低下いたしますので、それを利用して安く競落することを目指す、あるいは占有権原を主張いたしまして立ち退き料を要求する、こういうような執行妨害の形態が非常に多く見られるわけでございます。

警察等も現在この執行妨害対策には力を入れておりまして相当数を検挙していただいておりますが、警察の調べでは、その大半においてこの短期賃貸借制度がその手段として悪用されていると、こういう実態がございます。

もちろん、裁判所の方も、この仮装の賃貸借を何とか適正な形で処理したいということで努力をされておりまして、非常に高額の敷金が設定されている、あるいは賃料全額が前払になっている、譲渡、賃貸の、転貸の特約がされていると、こういうような通常のものに比べて異常な条件が付いているようなものにつきましては、これは仮装である、あるいは執行妨害目的であるということを積極的に認定をして引受けしないものと扱うというような対応策も講じておりますが、そういう対応策が講じられますと、今度は濫用する方も、そのぎりぎりに裁判所が認定できないような範囲で敷金等を設定するとか、そういう、手口がどんどん巧妙になってきております。

そういうことから、ある意味ではイタチごっこでありまして、一生懸命対策を講ずれば、またその裏をかいてこの短期賃貸借制度を悪用していくと、こういう形が見られるわけでございます。

御指摘のように、もちろん正当な短期賃貸借というものもたくさんあるわけでございますが、一番の問題は、それと濫用されているものを完全にきちっと見分けられるのかと。これが見分けられれば、もちろん正当なものは保護し、異常なものを排除するということでいいわけですが、結局、その境というのは常にあいまいでありまして、どうしてもなかなか難しい問題が残ってしまう。そういうことから、従来からこの執行に関与する者の間では、何とかこの短期賃貸借の問題を解決してほしいと、これを解決しなくては執行妨害というのを減少させるのは難しいと、こういうことが言われていたわけでございます。

それともう一つは、今度は、いわゆる賃借人の保護として現在の短期賃貸借制度が合理的なものかという問題もあるわけでございます。これは、先ほど申し上げましたように、元々、抵当権者に本来的に対抗できないものを、ごく短期間に限ってその保護を与えようと、こう考えたものですから、必ずしも長期間使うことは想定しておりませんので、例えば五年というような賃借権の設定を行いますと、これは全く保護されないということになります。それから、三年内の短期の賃貸借でございましても、この三年の期間の満了が競売の手続の途中である、要するに競売開始決定がされてから競落されるまでの間にその賃貸借の期間が満了してしまいますと、その段階で更新は認められませんので、全く保護を受けない、対抗できないことになってしまいます。そういう非常に偶然的な事情で保護が認められたり認められなかったりと、こういうことになりますので、現状で申し上げても、相当数がそのような期間満了によって保護の範囲外になってしまう。したがいまして、そういう人たちにとっては、競落をされますと直ちに明け渡さなければなりませんし、敷金についても従前の貸主に請求するしかないと、こういう形になっております。

そのような非常に濫用されるという、されやすいということと、賃借人の保護にとっても必ずしも合理的な制度ではないという、この二点を考え合わせまして、今回、思い切って短期賃貸借は廃止すると。ただ、その代わり、保護すべきものは保護しなければなりませんので、明渡し猶予期間を一律に認める、あるいは、新たに抵当権設定後、その抵当権者の同意を得て賃貸借の登記をすれば抵当権者に対抗できると、こういう新たな制度を作ってその賃借権者の保護を図ると、こういう形を考えたわけでございます。

千葉景子

今、お話がございましたように、確かに、いわゆる占有屋、不当なものと、濫用と、そして正当なものとの、なかなかその区別というのは付きにくいと、これもあるかと思います。

それと、言わば賃貸借契約の在り方。一定の短期の賃貸借を保護をするというような法制を取ってきたわけですけれども、本当にそういうことが今の実情に合うのかどうかということも含めて、本来であればこれは賃貸借契約の在り方というんでしょうかね、それをやっぱり本当はもっと詰めて議論をしておかないといけないのかなという感じがしております。今回はちょっとそこまで議論を詰めることができませんが、是非そういう視点も今後も引き続き念頭に置きながら制度の運用などをしていかなければいけないなというふうに思っております。

ところで、この法案、衆議院の方で明渡し猶予期間を延長する修正がなされております。この修正の趣旨について、修正の提案者からちょっと理由を御説明いただきたいと思います。

衆議院議員
山花郁夫

原案では、抵当権者に対抗することができない賃貸借に基づく抵当建物の占有者に対し、建物の競売による売却のときから三か月間は建物を明け渡さなくてもよいこととしております。これは、競売による建物の売却によって、突然に生活であるとか営業の本拠から退去を求められることによって賃借人が被る不利益を避けるためなんだろうと推察をされます。

ただ、今、千葉委員からも御指摘がございましたように、価値権と利用権の調和ということで、どの辺で調整をするかというのは大変難しい問題でありまして、普通、マンションなんかは二年間ぐらいで契約するじゃないかという御指摘については、個人的には、ああ、なるほどと思うところもあるんですが、こうした、合意ができましたのは六か月というところが衆議院側のところでございます。

と申しますのも、衆議院で参考人の質疑などを行ったときに、確かに健常者であるとか若年であれば三か月ぐらいあれば引っ越しの準備をしたりとか、そういった転居先を求めたりとかいうことは十分可能なのかなという反面、お年寄りであるとか、あるいは特にシングルペアレントの方、子供を育てながら離婚をされているケースであるとか、当初より法律婚にない方であるとか、そういったシングルペアレントの方などでは、実際、保証人を求められて、よもや別れた夫の方を保証人に立てるわけにもいきませんし、お父さん、お母さんを保証人に立てると、今度は、この人はちゃんと収入あるのかというようなことを聞かれて、なかなか家を、転居先を見付けるのも容易なことではないというようなお話も伺いまして、そうであるとすると、生活の本拠から退去を求められることによって賃借人が被る不利益を避けるという趣旨を全うするためには、猶予の期間を三か月ということではいささか不十分ではないかということで、これを六か月と修正することによって、建物、競売建物の賃借人が被る不利益をより少なくすべきであると考えたためであります。

ただ、一方、価値権の方も無視することはできませんが、明渡し猶予期間中は、競売建物を買い受けた者はその建物を自ら使用することができないこととなります。ただ、六か月という程度であれば、競売物件を買い受けようとする者の意欲減退によって円滑な売却が阻害されるという問題も生ずるおそれが少ないものと考えまして、したがいまして修正案の方では、明渡し猶予の期間を買受人の買受けのときから六か月としたものでございます。

千葉景子

今、修正の趣旨が御説明をされました。先ほどから申し上げますように、やっぱりこれだけ大きな抜本的な制度の変更が加えられるというときに、やっぱりいろいろな意見を聞き、そして議論を積み重ねることによりまして、やっぱり一定の、お互いここならという納得点みたいなものというのも、衆議院でのこのような修正で見られるように出てくるわけですよね。そういう意味では、やっぱり議論を積み重ねたり、あるいはいろんな多角的な意見を聞くということが大変大事なんではないかなというふうに思っております。

そういう意味で、最初は三か月ということだったんですが、本当にこれは十分な、こなした上で三か月というのが出されたのかなと、いささか疑問を残すところですけれども、やはり是非こういう、更に前進できるような議論というのがこれからも必要だろうというふうに思います。

これ、私もちょっと、なるほどなと思ったんですけれども、この明渡し猶予期間、これ、今度は明渡し猶予期間ということになりますので、賃借り人とそれから競落人との間というのは、何というんでしょうね、正当な占有権原というか、賃貸借契約が継続するわけではないんですね。言わば、何ともはや、確かに猶予期間なんだというだけですので、この間が結局、不当利得のような法律関係になるということでございます。

それで、どうもそこを、何というんでしょうね、整理をするために、衆議院の方でもまた更に六か月に延長したということとの関係で三百九十五条の二項というのを修正で新たに新設をしたということになるんですけれども、これはどういう意味を持つんでしょうか、御説明をお願いします。

衆議院議員
山花郁夫

御指摘がございました三百九十五条第二項を新設する趣旨でございますが、御指摘がありましたように、明渡し猶予期間というのは、これは本当に明渡しを猶予する期間ということであって、賃貸借契約が継続しているということではありません。したがって、建物を使用している者は、建物について賃借権その他の占有権原を有することにはなりませんから、その猶予期間の満了まで明渡しをしないことが許されるというにとどまるものでございます。

そして、その間、占有者は、明渡し猶予により無償で建物を使用するということができることになるわけではありませんで、建物所有者となりました買受人に対して、建物の使用の対価ということで賃料に相当するであろう額の不当利得返還義務を負うということになります。賃料相当額というのは、これは推定でありまして、実際の不当利得に当たる額が幾らになるかというのはまた具体的事情に照らして決せられるものだと思います。

建物使用者が明渡し猶予期間中の使用の対価を買受人から請求されても支払わないというケースも出てくるかと思いますけれども、こうした場合に六か月の期間が満了するまで建物の使用を許すとすることは、建物所有者、買受人になりますけれども、こちらの権利をこの場合は不当に害するということになるんであると考えられます。

そこで、修正案にございますように、民法三百九十五条に第二項を加えまして、買受人が建物使用者に対して相当の期間を定めて一月分以上の使用の対価の支払を催告をしたにもかかわらず、その期間内に建物の使用者がその支払をしない、こういった場合には、その期間の経過後は買受人は建物使用者に対して建物の引渡しを求めることができる、こういった手当てをしたものでございます。

千葉景子

ありがとうございました。

時間が本当に限られておりまして、本当、これで、これだけでこの法律を、私も議論を私自身として終えちゃっていいのかなと本当に思うんですけれども、時間でございますので大臣に最後にお聞きをしたいんですけれども、今回の、少額定期給付債務の履行の確保が認められることになりまして、特に養育費の支払ということについて一定の本当にこれは前進であろうというふうに私も思っております。

ただ、正直申し上げまして、本当にこれだけでこれまで御苦労なさっていた養育費を何とか確保しようという方に十分期待にこたえられるかなと思いますと、まだまだこの先があろうかというふうに思います。外国の法制などでも、国なり行政が立替えをしながら、それをまた相手方から償却をしていくというような制度があったり、いろいろこの養育費の支払確保には知恵を絞っているということもございます。

大臣、いかがでしょうか。今回、前進であることは私も大変うれしく思っているところですけれども、今後もやっぱり、大臣も多分関心をお持ちの部分ではなかろうかというふうに思いますので、養育費の支払の確保などにつきまして更なる法整備などに向けて是非イニシアチブを発揮していただきたいというふうに思いますが、大臣の御見解をお伺いをして、終わりたいというふうに思います。

国務大臣
森山眞弓

養育費の支払の確保というのは非常に私どもも多大な関心を持っておりまして、かねてから改善が必要だということを度々いろんな機会に話してきたところでございます。このたび、本法律案によりまして養育費等の履行確保のための民事執行手続の改善が実現するということは、私としても大変うれしく思っているところでございます。

もっとも、養育費の支払の確保の方法につきましては外国の法制にも様々なものがあるようでございますし、これらを参考といたしまして、他の省庁におきまして更に検討が行われる際には、法務省におきましても民事基本法制を所管する立場からできる限り協力をしてまいりたいと考える次第でございます。これが改善の第一歩だというふうに思いまして、今後とも関心を持ってやっていきたいと考えています。


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