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組織犯罪対策3法案についての参考人質疑 [法務委員会] (1999.7.22)

組織犯罪対策3法案についての参考人質疑
千葉景子君  民主党・新緑風会の千葉景子でございます。

 きょうは、三名の参考人の皆さん、本当に貴重な御意見をありがとチございます。

 私は、この三法案を考えるに当たりまして、私なりに一定の視点を持たせていただいております。

 一つは、これは神参考人もおっしゃっておられましたけれども、私も決して犯罪を許そうということを考えているわけではありません。だれもが安心して生活できる、そういう社会を考えていくことは私たちにとっても責任であろうと思っています。

 ただ、そのためには、犯罪がどういう経緯で、あるいはどういう原因で発生をしてくなのか、あるいはその置かれた人たちの立場、あるいは経済社会状況、こういうものをもきちっと踏まえた上でそれぞれに対して総合的な対策を考え、その中で必要とあらば刑事手続あるいは刑事法による対応というのも考えていくべきだというふうに思います。

 その意味では、本当にこの三法案がそれをきちっと厳密に検討し、そしてそれにふさわしい対策となっているのかどうか、そのあたりも私は疑間を抱いているところでもございます。

 それからもう一つ、それに対してどういう刑事的な対応をとるかという意味でも、非常に従来の刑事法体系を抜本的に変更しかねない、そういう内容をそれぞれの法案が持っているのではないか。これも既に先ほど多少御指摘がございましたけれども、いわば捜査概念というものを大きく変更する、こういう側面もこの法律案は持っていようかというふうに思います。そのあたりでの小手先ではない、根本的に日本の刑事法がどうあるべきかということも含めて検討しなければいけないことだろうというふうに思います。

 それからもう一点、これはこの参議院の法務委員会でもこの間の審議で大変大きな注目点になりましたけれども、今や社会は高度情報社会に入ってきております。そういう中で、通信といってもこれは大変幅広い、電話あるいはファクシミリ、あるいは今やインターネット、こういう時代になっています。この通信傍受という問題が、これらの情報社会、あるいはこれからさらに進展していくであろうこういう社会を本当にきちっと見きわめ、そしてその将来像などを考えた上で立てられているのかどうか、こういう点にも私はいささか疑間を感ずるところでございます。

 こういう視点を私は持ちながら質問させていただきますので、ぜひ御理解をいただき、適切な御説明をいただければというふうに思っています。

 そこで、三名の参考人の皆さんにそれぞれお尋ねをしたいというふうに思うんです。

 先ほどからの御発言では、例えば電話あたりをその根底に置かれてお話があったようには思うんですけれども、インターネットという時代になって、この法案をどう考えておられるか、そしてその問題点等、この間もしお考えになったりあるいは御検討になったりされた点がございましたら、それぞれ御指摘をいただきたいと思います。神参考人の方から、いかがでしょうか。

参考人
(神洋明君)
 確かに、これまでの議論というのが電話を対象とした傍受の問題がいろんな形で例に出されて議論されてきたと思います。

 しかしながら、これからの社会、まさにインターネット社会という形に言われておりますので、その意味でこの法律案はインターネットも対象になるというふうな理解を私どもはしております。

 したがいまして、このインターネットの場合について、どのように実際にメール部分なりそういうものを対象としてそれを押収するのかというような問題に対して重大な関心を抱いております。

 法律案の中では、一般的にはいわゆる暗号だとかあるいは外国語による通信については一たん全部聞ける形になっていますが、インターネットの場合、それがどうなっているのかということについての細かな規定はないという点では若干の疑念を抱いております。

参考人
(田口守一君)
 御指摘のとおり、インターネット、とりわけメールですね、そういったものによる通信というものがこれから大きな役割を演ずるであろう、そしてまたそれが犯罪通信に使われるであろう、そういう社会であろうことは私もそのとおりだと思います。そして、これらのインターネット等を利用した通信を電話と区別してもし傍受の対象から外すということになりますと、これは犯罪組織としてはそれらを使えば安心であるということになりますので、まずこういったインターネットによる犯罪通信を捕捉する方法ということを考えなければならない。

 しかしながら、これについてはいろいろと今も神さんの方から御指摘がありましたけれども、電話とは違った困難さが伴うであろうと思いますけれども、これについては今後、最終的な令状は裁判官が出すわけでありますが、捜査官の収集したメールであれば、メールによって犯罪通信が行われるであろうという疎明資料等を厳密に検査していただいて令状を出していただくことになるであろうというふうに理解しております。

参考人
(村井敏邦君)
 私もインターネットについては基本的には電話と違うことを考えなければいけないだろうと思うんです、通信傍受を認めるとしても。今度の法案でインターネットも当然対象にしているようですけれども、果たしてこの規定で十分なのかという点になると、手続的には甚だ落ちがある。したがって、通信傍受を認めるとしましても、本来は別にすべきものであろうと思います。

 特に一番問題なのは、先ほど神さんの方からも出ましたけれども、暗号を使った通信というのが、これはもちろん電話の場合にもありますけれども、とりわけインターネットの場合には、メールの場合にはそういう形でやられることになります。そうなりますと、これを解明するのは大変な 労力と時間がかかる。先ほど来問題になっていることですけれども、該当通信であるかどうかということを調べるためには、全部ダウンロードするなり、どういうふうな形にするのか、ともかく全部いわゆるここでいうところの傍受をしなければならない。それを解明することになると、果たして現実に犯罪を摘発するのに役立つだけの時間的な余裕があるか。大変に時間がかかってしまって、結局意味がないということになってしまう可能性はあります。

 そこで考えられるのは、暗号を使ってはいけないという形が考えられます。これは現にアメリカではそういう提案がなされておりますが、これはまさに通信の秘密を害することになります。ただ、有効にやろうとすればそういう形にならざるを得ないだろうということをこれまた恐れています。

千葉景子君  このインターネットにかかわっての問題については、この委員会でも本当に疑問あるいはわからない部分が深まるばかりというところが実情でもございます。時間がございましたら、またお聞かせをいただきたいというふうに思うんです。

 先ほど私も指摘をさせていただきましたけれども、犯罪を防止するあるいは適切な捜査をするといっても、やはりそれにはきちっとした憲法上のルール、こういうものを守った上で、そして適切な対応というものが求められるだろうというふうに思っています。

 そこでお聞きしたいんですけれども、村井先生、先ほどもちょっとお触れになりましたけれども、これまでの犯罪捜査というのは既に起きた犯罪のために証拠を収集する、こういうものが犯罪捜査として体系づけられてまいりました。そして、それに対して犯罪の予防活動というのはいわば刑事行政というような形で区別されてきたというのが日本の体系ではなかったかというふうに思います。

 これに対して、今回の通信傍受というのは 先ほどのお話のように、将来発生するであろう、そういう予測を非常に要素とした問題であるし、さらに将来発生する犯罪についての傍受というものも認める、二重の予測というお話をなさいました。こういう基本的な体系を大きく変えていくようなこういう法案、いいのかどうかということはわかりませんけれども、やはり相当厳密な、あるいはこれからの日本の将来の刑事法というのをどうしていくかということを含めて考える必要があろうかというふうに思うんですけれども、その点について先生はどうお考えでいらつしゃいましょうか。

参考人
(村井敏邦君)
 おっしゃるとおりです。

 先ほども申しましたように、特に将来の犯罪を通信傍受の対象にするということになると、まだ犯罪が発生していないのに証拠を収集するということなわけで、私ども、すべて犯罪の発生ということを契機に捜査が始まるものだということで講義などをやってきました。そこを変えなければならないということになります。

 これは大変なことなわけで、従来は捜査の端緒というものと捜査というのを分けるということをしておりました。捜査の端緒というのはいわば一種の行政警察活動である。捜査の端緒から犯罪が発生しているあるいは発生したということが把握できてから捜査が始まるということで、司法警察の役割がそこから発生するんだという形で講じ、議論をしてきました。そういった分け方がいけないんだというのが最近の議論の中で出てきているんですけれども、根本的にこれは警察活動及び捜査活動というものの概念を変えることになってしまいます。

 この点で、少し解釈論的なことを言いますと、刑事訴訟法百八十九条に「司法警察職員は、犯罪があると思料するときは、犯人及び証拠を捜査するものとする。」という規定があります。この規定の解釈として、「犯罪があると思料するとき」というのは、当然にもう犯罪というものがあって、それで犯人及び証拠を収集するんだというのを当然解釈としてやってきたわけですが、「犯罪がある」と言っているんだから、あつたということではないという、非常に枝葉末節な言葉を持ってきて、犯罪があったということに限定されないんだということが、ある一部の方から議論がされております。

 そういう意味で、将来の犯罪も従来から捜査というのは認めてきたんだと言っておりますけれども、これは全く従来の議論とは違うことです。犯罪があるというのは、少なくとも現にあるということであって、あるであろうというのとは明確に区別されるので、刑事訴訟法上からは少なくとも将来の犯罪のための捜査というのは認めてこなかったと言わざるを得ない。

 憲法はどうか。憲法の規定は、特に捜査概念について規定はしておりませんけれども、基本的にはやはり犯罪というものの把握というのは今言ったような形で考えていたんだろうと思います。

 その意味では、憲法、刑事訴訟法の基本的な概念を変えることになるというのは先ほど指摘したとおりであります。

千葉景子君  ところで、今回の組織犯罪対策三法案、とかく国際的な比較、あるいは国際社会からの要請ということが指摘をされています。それは全く否定するものではありません。

 確かに、国際的に薬物犯罪、こういうものを何とか少なくしていこう、これに国際協力をしていこうという動きがあることも当然ですし、マネーロングリングなどについても国際的な要請があるということは私も承知をしています。ただ、じゃ、それを我が国でどういう形できちっと取り締まり、あるいは対応していくかということになりますと、外国のやり方をただ日本に引き入れてくればよいということではないだろうというふうに思います。

 そこで、神参考人にお聞かせをいただきたいんですけれども、国際化ということを考えると、じゃ刑事捜査体系あるいは令状の実務、こういうところも国際社会とどう同じでどう追うのか、こういうことも総合的に考えておかなければいけない。ただ要請があるから、例えばアメリカでやっているから、それをそのまま日本に持ってくればいいというわけにはいかないだろうというふうに思うんです。総合的に考えたときに、捜査体系あるいは裁判所の令状の実務等で、例えばアメリカとの比較などでどんな点が異なり、あるいはどういう問題点があるとお考えでしょうか。

参考人
(神洋明君)
 多分詳細はお二人の学者の参考人の方から補足いただけると思いますが、私は日本の捜査体系あるいは法体系がどうなっているかということと無関係に通信傍受法案が認められるべきではないというふうに考えております。

 例えば、日本においてはいわゆる二十三日間という長期の逮捕・勾留というものがあります。この逮捕・勾留が、しかも代用監獄の中で取り調べがされるということにもなっております。しかも、日本の捜査というのは一つの特色を持っていると私は考えております。これは日本の捜査が分業化されていないのではないかという点であります。

 これはどういうことかと申しますと、捜査というのは本来は初動捜査、要するにどういう人が犯人で、どういう事件が起こっているのかということを調べる初動捜査と、それをさらに裏づけをする本格捜査、そして最後に取り調べという形の段階が経られて一般的には行われるというふうに言われています。

 諸外国の例は、私が理解する限りでは、おのおの担当する人が違って、前に行ったものについてチェックをする、このようにされている。そのために捜査機関内部にチェック・アンド・バランスが働くということがあるんですが、日本の捜査においては同一人が初動捜査も本格捜査も取り調べも行うという形で行われているので、チェック機能が働かないということがあると思います。そういう意味での比較の問題も必要だろうと思います。

 このチェック機能が働かない警察官が現実に通 信の傍受をした場合、どこまで自主的に、いわゆる関係のない会話を排除していく努力をするのか、そこを疑問に思っております。

 それから、日本の場合には、諸外国と違って起訴前の保釈制度がありません。しかも、先ほど田口参考人もおっしゃいましたけれども、被疑者の国選弁護制度もないという問題もあります。さらに問題を申し述べますと、私もイギリスで視察をしてきたんですが、捜査の可視化という問題について日本の捜査についてはほとんど意に介していない。どういうことかと申しますと、例えば取り調べに弁護人が立ち会うだとか捜査過程をテープにとって録音するといったようなことが今の日本の警察では認められていません。さらに申し述べると、捜査段階における証拠の開示といった問題が、例えばイギリスやドイツなどでは行われていると言われています。

 それと、違法収集証拠の排除の問題、これはアメリカにおいてはかなり徹底しております。ところが、日本の判例においては、重要な証拠であればそれは証拠にすることができる、相当であれば証拠にすることができるという形で、ある意味でしり抜けの形になっています。この違法収集証拠の問題は、例えばマニュアルをつくって通信傍受を行った場合、アメリカの場合にはいささかの違法もあってはいけないという心理的な要請が働きますので、それをなるべく抑制しようという形で捜査官の方に働きます。ところが、日本の場合については先ほどのようにしり抜けになっておりますので、捜査官をそこまで信用できるのかどうかという問題が起こってくると思います。

 そういった総合的な施策の中でこの通信傍受を考えなければならないという意味では、国際的な要請の観点からいえば、今述べた点については日本は著しく欧米諸国に立ちおくれているのではないかというふうに考えております。

千葉景子君  時間になりましたので、終わります。ありがとうございました。



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