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司法制度改革審議会設置法案への参考人質疑 [法務委員会] (1999.5.25)

司法制度改革審議会設置法案への参考人質疑
千葉景子君  本日は、四名の参考人の皆さん、貴重な御意見をありがとうございました。

 私も、この司法改革というものにこれぞという回答を持つ者でもございませんし、これからぜひ真剣に取り組ませていただきたいと考えているところでございます。そこで、それぞれの参考人に、限られた時間でございますので十分にお尋ねできない部分もございますけれども、何点か御質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 さて、この司法改革の問題が、全体として見ますと、ある意味では経済の大きな動向の中で語られ始めたということが言えるのではないかというふうに思っております。これは決して否定すべきことでもございませんし、そこから司法の重要性というのが改めて問い直されるということは当然必要なことであろうというふうに思っております。

 ただ、かといって、司法というのは経済そのものではございませんので、そのあたりの司法の本来負うべき基本的な役割、理念、そういうものとこの大きな経済やあるいは国際的な動向の変化、こういうものと調和させながら、あるいは整合性を考えながら司法改革というのも取り組んでいかなければならないのかな、こんな気がいたします。

 そこで、まず小田中先生にお伺いをさせていただきたいと思います。

 先生の、司法という問題は経済の効率性などとは本質を異にする、基本的な人権保障というのがやはり司法の理念であるということは私も十分理解するところでございます。ただ、今、私が感じておりますように、そう言いながらもやはり社会の状況というのが大きく変化をしてきている。例えば、国際化が進み、あるいは情報化も進み、そういう中で基本的人権を尊重していく、そのためにどういう形で司法のありようというものを考えていくべきか。ちょっと抽象的な漠然たる質問で大変恐縮でございますが、経済の動きとの兼ね合いというのを先生はどのように整理されておられるでしょうか。何か御示唆がございましたらよろしくお願いをしたいと思います。

参考人
(小田中聰樹君)
 今の御発言、私も問題意識は全く同じなんです。

 一方において社会的な変化の要請が司法に対してあり、それがかなり今動いてきているという事実があるわけですが、他方において、もう絶対にこれは動かすことができないと私は思うんですが、司法には司法の固有の任務といいますか特殊な任務というものがあって、それは私が先ほど申しましたように、基本的人権の擁護、例えば裁判の利用という問題について、公正な裁判を受ける国民の権利という問題、決してそれは単に制度の問題ではなくて権利の問題だという観点から、それのアクセスの問題にせよ裁判手続の改善にせよ取り組まなくちゃいかぬというふうに思うんです。いずれにしても、一方における社会の要求と他方における司法の原則というものとどう調和させていくか、これが大変に重要な課題になってきていると私は思うんです。

 問題なのは、私がきょう言いたかったのは、それをあたかも経済的な要求がすべてであるかのような枠組みを設定しながら、つまり逆に言えば、司法の固有の任務というものについて限りなく相対化し軟化させながらそれにフィットさせていくという議論の仕方、これはやはりいかがなものかというふうに思っているわけです。

 ですから、例えば司法制度改革審議会という名前のものが仮にできたとしても、そういう問題について、先ほど田中さんの方から調査の重要性というものを随分強調されて、私もその点同感なんですが、きちんと議論をして、そして十分な合意を得てそれを制度改革案につなげていくというオーソドックスなやり方がとられるべきであっ て、例えば、大変言いにくいことではありますけれども、二年なら二年という時限を区切ってばたばたばたと議論していくという問題ではなかろうと言っているわけであります。

 今の千葉先生の御質問に十分には答え切れていないとは思いますが、私の言いたかったこともある意味では千葉先生の問題意識と同じでありまして、そういうことをじっくり議論する場をやはりきちんと確保すべきだ。私は、法案の第二条には基本的な問題がある。ああいう枠組みの設定ではなくて、一方に社会の変化があるとすれば、他方において憲法の、司法の固有の原則、理念、任務というものがあるので、それとの関係において十分に審議せよ、調査せよというのが課題でなければならないというように思うわけです。

千葉景子君  ありがとうございます。もう一点お聞きいたします。

 この議論は経済との関連がかなり強いという背景と関連をいたしまして、司法というのは、必ずしも民事あるいは経済分野にかかわるばかりではなくて、刑事あるいは家事あるいは今非常にいろいろ問題になっております少年、こういう部分にも大変重要な役割を帯びているわけですね。このあたりについて、もし何か先生が、こういう問題点についてぜひ論議せい、あるいは忘れてはならじということがございましたら御指摘をいただければと思います。

参考人
(小田中聰樹君)
 刑事、民事や少年の問題について改善すべきことは本当にたくさんあると思います。例えば刑事の問題一つとってみても、代用監獄の問題とかあるいは取り調べの問題であるとか、あるいは証拠の扱い方の問題ですね、伝聞法則などというものがありますけれども、その例外が非常に広く現在運用されているわけですが、そういう運用も含めた問題が多々刑事にはあります。

 もう一つつけ加えさせていただければ、誤判の問題もあるわけであります。再審制度を通じて十分には救済され切れていないという問題があって、再審法の改正なども今まで何度も緊急の課題であるとして私たちは主張してきたところです。

 それらも含めて、刑事にもたくさん問題があり、また少年については少年法改正の問題が今起きておりますけれども、やはり改善すべき点があるわけであります。例えば、少年に対する国選の付添人の整理整とんを初めとしてたくさんあります。これらはいずれも公正な裁判を受ける権利の問題でありまして、私はそういう権利の問題として改善すべき点を本当に日本の司法制度はたくさん抱えているというふうに思います。

 問題なのは、それとはまた逆のコンセプトから来る改革要求もあるわけですね。例えば、社会的矛盾の増大に応じてさまざまな刑罰機構というものを整備しなくちゃいけない、そういう観点からの改革要求も社会的には存在しておりますし、また有力に法曹内部でも一部主張されているところであるわけです。

 しかし、そういう問題があるわけですが、私自身は、先ほど申したような公正な裁判を受ける権利の保障を充実強化していくという観点で問題を取り上げ、そしてそれに適切な解決策を用意していくということが今急務だというふうに思います。

 いずれにしても、その際に問題なのは、やはり憲法的な観点から見てその問題をどう取り上げていくか、そういう取り上げ方なんだろうと思うんです。ですから、そういう点で、私先ほど冒頭に述べたこととまた関連いたしますけれども、基本的人権の擁護という司法固有の任務に即しながら問題を取り上げ、整理し、対策を講じていく、そういう姿勢をやはり国会においても法曹内部においてもとるべきである。司法制度改革審議会というものもその観点で問題を取り上げていくべきだというふうに考えております。

千葉景子君  それでは、熊谷参考人にお尋ねをいたします。

 やはり経済的な側面というのは、労働組合、働く者にとっても今大きな課題であろうというふうに思うんです。どうもこの改革問題を考えるときに、よくグローバルスタンダードといいますか国際的な流れにきちっと日本の社会も対応していく、そういう意味での司法というとらえ方もされるんですが、グローバルスタンダードと考えましても、決して市場原則だけがグローバルスタンダードではなくて、先ほど参考人がおっしゃいましたように、例えば多国籍企業、そういう中での働く者の位置づけとか、あるいはまた世界的にも男女共同参画の社会とか、働いている者、あるいはそこの人間にとっても今非常に問題点が多くなってきているというふうに思うんです。

 そういう意味で、司法改革の中でいわば国際的な課題、あるいはグローバルな視点、こういうことについてどんなふうに改革論議の中で取り上げていくべきか、そんな観点について御意見があればお尋ねしたいと思います。

参考人
(熊谷謙一君)
 今、先生の御指摘になったお話について二点申し上げたいと思うんです。

 一つは、特に司法をめぐる国際的な制度改正というのが一九七〇年代、八〇年代、特に欧州では大変活発に続けられておりました。したがいまして、いい意味でのグローバルスタンダードとしての司法から見ると、先ほどいろいろ議論がありました扶助制度の問題についても、あるいは倒産法制の問題についても、人権擁護のいろいろな仕組みの問題についても、大変今までおくれていたものがさらにおくれているというのが日本の司法制度の現状、これがグローバルスタンダードとの比較においてあるのではないかというふうに思っております。

 それから、我々の中でよく議論になりますグローバルスタンダードの問題としては、特に働く者、国民の過半数を占める勤労者の権利等につきましては、立法については国際労働機構、ILOの三者構成原則が世界的に受け入れられておりまして、我が国でも立法に関しては審議会の三者検討を経てという形が慣行となっております。しかし、これが一たび司法の場に移りますと、三者も何も、何の参加の保障もない。ILOができたのが今世紀の初めですから、いわば前世紀の世界に戻ってきているような感じがしているわけであります。そういう意味からも、司法がグローバルスタンダードのいい面から大変おくれているのではないかという印象を持っております。

 ただし、私はグローバルスタンダードというものはすべて善とは思っておりません。特に、激しい市場経済というものが果てしなく続けば、それは必ず国際的な紛争を生むというのが今までの流れでございますので、これについては社会的な合意とかあるいは南北問題だとか、そういうようないろいろな手だてで改善をしていかなくてはいけない、あるいは対抗していかなくてはいけない面を含むものであると思っております。

千葉景子君  ありがとうございます。

 田中先生、宮本先生にもお尋ねしたいんですが、時間でございますので、またほかの委員の皆さんにゆだねたいというふうに思います。

 ありがとうございました。



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