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外国人登録法・出入国管理法の改正案への質疑 [法務委員会] (1999.5.13)

外国人登録法・出入国管理法の改正案への質疑(5/13) 1/3
千葉景子君  民主党・新緑風会の千葉景子でございます。

 きょうは外国人登録法、入管法の引き続きの質疑でございますので、入管法にも関連をいたしますが、ちょっと通告をしていないんですけれども、おわかりであればお願いをしたいというふうに思います。

 と申しますのは、昨日、コソボからいわば難民と称してよろしいのか、一家五名が日本に来日、入国をしたという報道がございます。これについてですが、この取り扱い方というのはどのような根拠、それから経過ということでございましょうか。ちょっと通告なしで大変恐縮ですけれども、おわかりであれば御説明をお願いしたいと思います。

政府委員
(竹中繁雄君)
 今度のコソボ周辺諸国に避難しておりましたコソボ出身のユーゴスラビア人一家五名に対しまして、親族訪問を目的で五月十二日に入国を認めた事実がございます。
千葉景子君  親族訪間での短期の入国というのは、当然通常でもあり得ることであろうかというふうに思うんですけれども、今回のケースは、全く通常ベースといいましょうか、そういう形で行われたものなのでしょうか。それとも一定の国際的な協力といいましょうか、人道上のそういうことも配慮に入れ、そしてそういう全体の一環としてこの五名の入国というのが位置づけられているのでしょうか。その点については基本的には法務省で判断をされるということでしようが、そこで通常どおりされたものか、それとも政府全体として、特別な全体の形の中で決定をされたものなのでしょうか。
政府委員
(竹中繁雄君)
 今回につきましては、コソボから避難している親族を呼び寄せたいということを言っております在日ユーゴスラビア人からの要請があったことから、親族訪問目的で入国を認めたということでございまして、これはあくまでも個別のケースでございます。

 したがいまして、今回は、日本国政府としてコソボ難民の受け入れを決定したというふうなことの一環ということではございません。

千葉景子君  ちょっと実情などをまた詳しくお聞きすることがあろうかと思いますが、冒頭確認だけさせていただきました。

 それでは、きょうは入管法に関連をして、中心にお伺いをさせていただきたいというふうに思っております。

 今回の改正につきましては、基本的には、もう既に議論はされておりますけれども、新しく不法に滞在をしていることを処罰するというのが一点ございます。あとは、退去強制後の入国についてはその期間を一年から五年に延ばすということですね。それから、再入国許可については一定の緩和が認められたということがございます。

 この基本になっておりますのが、これもしばしば出ておりますけれども、やはり外国人の犯罪の防止、それから不法な滞在をできるだけ除去していくというようなことが挙げられるわけです。そして、その外国人の犯罪の実情というのが一体どのようなことになっているかということにつきましては、これも議論が既にございますけれども、やはり日本の国内、日本人に比して決して少ないわけではないということも指摘をされています。

 この数なんですけれども、こういうことが言われているわけです。日本の総人口に占める来日外国人人口の構成比というのはおおよそ一%、そして、それに対して来日外国人の検挙人員は日本人の一.七%。人口は一%なんだけれども犯罪率としては一.七%ということは、日本人に比べて犯罪を犯すことが多いのではないか、こういう数年になっているわけですね。

 ただ、改めて考えてみますと、この来日外国人というのが一体どこまでを含んだ数年なのか、ちょっとそこを改めて確認させていただきたいというふうに思うんです。この来日外国人の数というのはどういうところまでを含めた数字なんでしょうか、まずお尋ねをしたいと思います。

政府委員
(林則清君)
 ただいまのお尋ねの点でございますけれども、私ども、これを計上します際に来日外国人というふうにカウントしておりますのは、我が国においでになる外国人の方から、定着居住者、永住者等の方、それから在日米軍関係者及び在留資格不明の方、国籍は不明であるが明らかに日本人でない、こういう者を除いたものを来日外国人というふうに言っておりまして、平成九年中のこれら来日外国人による刑法犯検挙人員は五千四百三十五人でありまして、これを平成九年中の刑法犯検挙人員の総数である三十一万三千五百七十三人で除した数が先生今御指摘の一.七%という数字で出てくるわけであります。

 一方、我が国の総人口に占める来日外国人人口の構成比におきましては、平成九年末の外国人登録者数百四十八万二千七百七名から永住者等の六十三万千七百七十五人を引きました八十五万九百三十二人に、平成十年一月一日現在の不法残留者数二十七万六千八百十人を加えた百十二万七千七百四十二人を来日外国人人口の数値として用いておるわけであります。

 この百十二万七千七百四十二人というのを平成九年十月一日現在の我が国の満十四歳以上の総人口である一億八百三十一万人で除した数が一となる、そういう形で計算をしておるわけでございます。

千葉景子君  この母体となる数の中には不法滞在者は含まれるということですね。短期滞在などで入国をしている方々の数は含まれておりますか。
政府委員
(林則清君)
 人口の中に短期滞在は含めておりません。そして、来日外国人の方には一応含む形でカウントしております。
千葉景子君  そこのところだと思うんです。要するに、犯罪校挙をされる数の方は必ずしも人口に含まれる人々ばかりではなくて、例えば短期で滞在をしている、入国をしているという中にも犯罪発生というのはあり得るわけです。そうすると、犯罪の数の方は短期滞在が含まれている、そして人口の方は人口という意味で短期滞在者などは含まれていないということになりますと、比率を出す上で、片方は短期滞在も含まれる、母数の方は含まれないということになりますと、当然率は上がるわけですね、母数が小さくなるわけですから。

 この点についてはどうでしょう。短期滞在はおおよそ考えても三百五十万ぐらい出入りがあるかと思うんです。そのうち十四歳未満がどの程度かというのがありますけれども、それを除いても三百万近い数は短期滞在者などで入ってきている。そういうものをやっばリプラスして母数を考えないと、外国人の犯罪率が高いという数字が出てくるのではないかというふうに思いますが、そこは統計上そういう出し方はされておられませんですか。

政府委員
(林則清君)
 まさに御指摘のように、来日外国人という場合の数字の用い方と母数になる来日外国人人口というのが異なっております。これは御指摘のとおりでございます。ただ、来日外国人のうち、不法入国者数は当然のことながら不明でありますし、それから短期滞在の外国人登録を要しない方については、時点を限った計上が困難でありますので、計上していない。

 そういうことで、まさに先生御指摘のような観点は十分持ち合わせなきゃいけないとは思うのでございますけれども、今のところ我々としては、厳密にそういう意味で両者の数字というのは違うのでありますけれども、できるだけ犯罪の実態を見たいものですから、犯罪実態にできるだけ即したものを出せるようにという観点かち一つの指標としてこういう数字を用いておるということでございます。

千葉景子君  ただ、ある意味ではこの法案の背景に、外国人の犯罪がどういう実態にあるのかということがやはり基盤になるわけですね。そうすると、そこを統計上配慮して、そういう母数が違いますとか、あるいは統計のとり方が犯罪を見るときと人口を見るときとは異なっておりますということを明確にした上で数字を使いませんと、あたかも外国人の犯罪が多いかの形で数字があらわれてしまう、そういうことになろうかというふうに思うんです。

 私がおおよそ考えますには、人口ということではなくて日本に滞在をする外国人という形で考えますと、外国人登録をしている、これは滞在をするという意味ではいいかどうか別として不法に滞在をしたりしている、あるいは短期で出入りをしている、こういうことも含めて考えますと、そしてそれと犯罪の数、これを除してみますと、おおよそ犯罪率というのは日本の国内、日本人の犯罪率とそれほど極端に変わるものではないのではないかというふうに思うんです。先ほど八十五万人、百万人、それに短期滞在などを含めますと日本の総人口の、人口と言ってしまいますけれども、一.七五、一.五%以上ぐらいの母数になるのではないかと思うんですよ、日本に現実に一時期滞在をしている数というのは。そうなりますと、よく数字で出てきますけれども、来日外国人の人口は確かに一%という統計をとるんだと思うんですけれども、犯罪を起こす母体としてはやはり一・七、 一・五以上の母数。そうすると、検挙人員が先ほどありましたように一・七%ということであってもそんなに日本の社会と極端に外国人の部分が異なっているわけではないということになろうかと思うんですけれども、こういう見方をしておかしいですか。

政府委員
(林則清君)
 なかなか統計のとり方、大変いろいろと難しい問題があるというのは御指摘のとおりでありますので、私どもも先生の御指摘も十分踏まえながらなるべく実態に即した統計値が出るような用い方を、まだ工夫できるところがあれば考えてみたい、かように思います。
千葉景子君  そういう数字があるということですな。

 それから来日外国人刑法犯、これは数、それからその犯罪の罪名、これについてはどんな傾向があるでしょうか。

政府委員
(林則清君)
 来日外国人による刑法犯の検挙件数につきまして過去五年間の推移を見てみますと、年々増加を続けておりまして、平成十年は二万一千六百八十九件ということでございまして、平成六年の一万三千三百二十一件に比べますと約六三%増加をいたしております。

 これを罪種別に見ますと、殺人や強盗等の凶悪犯は、年によって増減はございますが、平成十年の検挙件数は二百二十二件で、前年に比べまして 二二%増加しており、ここ五年間においては最高になっておる。

 一方、窃盗犯が年々増加傾向にございまして、平成六年の一万百二十件から平成十年には一万九千七十八件ということで、八九%の増加を見せております。

 そのほか、傷害等の粗暴犯でありますとか、詐欺、偽造等の知能犯も、多少の起伏はございますけれども、全体としては増加傾向にあるという状況でございます。

千葉景子君  今のお話を伺いますと、いわば凶悪な犯罪というのは増減があるということですが、窃盗が極めて増加しているということがわかるのではないかというふうに思うんです。ですから、犯罪がふえているというときも、これもやはりどういう種類の犯罪がふえているのかということも十分考慮していかなければいけないといチふうに思うんです。

 さらに国別、地域でもよろしいのですけれども、これではどういう傾向があらわれているのでしょうか。

政府委員
(林則清君)
 平成十年中の来日外国人の刑法犯の検挙状況を見てみますと、地域別ではやはリアジアの国の刑法犯の検挙人員が四千四十三人ということで、来日外国人検挙人員全体の七五%を占めて、極めて高い割合となっております。

 国籍別の校挙人員で見ますと、平成十年中では中国が二千二百八十一人ということで最も多い。次いで韓国、朝鮮が五百四十八人、ブラジルが五百三十六人、ベトナムが三百四十人、フイリピンが二百六十九人の順となっておりまして、目立ちますのは、ベトナム人の検挙人員が平成六年には百九十八人でありましたのが平成十年には三百四十人と、非常に増加の傾向が強いというのが特徴であります。

 これ、検挙状況、罪種別で見ますと、先ほども御指摘ありましたように、平成十年中には窃盗犯の検挙件数が一万九千七十人件、人員が三千九十八人と最も多いということで、来日外国人犯罪の多くを占めておりますが、一方で凶悪犯について見ますと、先ほども申し上げましたが、検挙件数二百二十八件、人員二百五十一名ということで、過去五年間で最高になっております。

 傾向ということでございますけれども、最近一香著しいのが、犯罪が組織化しているということが挙げられまして、平成十年には共犯事件が九千三百四十九件ということで、全体の四三%を共犯事件が占める。これは、平成六年の共犯事件が三千六百九十一件、約二八%でありましたものが、ここのところへ来て共犯事件が非常に増加してきておるということでありまして、このような来日外国人犯罪が組織化されるということは、国内における不法滞在者を中心にして組織化、グループ化が進んでおるというのが一方であります。

 また、海外に本拠を置く犯罪組織等が我が国で活動をし始めたという点が背景にあるということでありまして、具体的には、貴金属店を対象にした広域多額窃盗事件でありますとか、あるいは旅券、外国人登録証明書等の偽造事件というものが目立っております。

 なお、不法滞在者による平成十年中の刑法犯検挙件数は八千六百四十七件と、来日外国人犯罪全体の約四〇%がこの不法滞在者によるものでございます。来日外国人犯罪と言っておりますけれども、その組織化はこの不法滞在者を中心に行われておるということがうかがわれるところであります。

 さらに、平成十年中の不法滞在者の刑法犯検挙人員千三百二名のうち、不法入国、不法上陸等の検挙人員は三百五十一人で、二七%となっておりますが、この人数についても、平成九年中の二百九十六人と比べ大幅に、一九%ばかり増加しておる。全体としてはそういう状況でございます。

外国人登録法・出入国管理法の改正案への質疑(5/13) 2/3
千葉景子君  今数字を挙げて御説明をいただきました。いろいろな見方があろうかというふうに思うんですね。私は、やはり非常にアジアの出身者、特に先ほど言ったように、ベトナムとかそういう地域の人の犯罪がふえているというようなこと、それから中国あるいは韓国というようなこともございました。

 これを見ると、一面、日本に定住性を持った、そういう資格で日本に滞在をしている、そういう中に非常に犯罪が多くなっている。しかも、先ほども出ているように、窃盗というような、やっぱり財産あるいは生活に絡む犯罪が非常にふえているのではないかというふうに思います。

 今おっしやったように、確かに不法滞在の中にも犯罪が多くなっているという数字も出ようかというふうに思うんですけれども、あるいは組織化といいますか、共犯関係が多くなっている。ただ、決して特別に犯罪を目的として入国をするというようなことが多くなっているわけではなくて、やっぱり日本の生活の場で、あるいは日本に定住性を持ったそういう人々の中にやむないこういう事態が生じているのかなという気もいたします。

 そこで、大臣、今いろいろな数字を挙げながら、それから犯罪の傾向、こういうようなものの説明を警察庁の方からいただきましたが、確かに、決して犯罪がないわけじゃないんですね。ただ、先ほど言ったように、数字、統計のとり方あるいは犯罪の内容等を考えますと、外国人だから非常に犯罪性があるみたいなとらえ方、そして、そう思われがちないろいろな発言や表現、こういうものにはやはり十分注意が必要なのではないかというふうに思うんですけれども、大臣はどういうふうに今の数字などを聞きながらお感じになられましたですか。

国務大臣
(陣内孝雄君)
 この統計のとり方の難しさというものを改めて感じたわけでございますが、そういう中にありまして、外国人の国内におけるさまざまな活動を表現するとすれば、今のところ警察庁のこういう考え方、こういう数字というのはそれなりに一つの意味がある、説得力のある数字じゃないかなと思いながら伺いました。
千葉景子君  ぜひ、どういう数字であるのか、あるいは中身がどういうことであるのかということなどにも十分に配慮をしたとらえ方をしていただきたいというふうに思うんです。

 それで、もう一つ、いつも犯罪の罰則を強化したり、あるいは新しい罪名をつくるというときには、それの効果というようなことがやっぱり考えられるのだろうというふうに思うんです。

 例えば、一九九〇年には不法就労助長罪が導入をされました。それから、一九九七年には不法入国幇助罪が導入された。これも多分こういうものをできるだけ防止しよう、減らしていこうということをもくろんだやはり改正であったというふうに思うんです。

 ただ、実際にどうだろうかということを数などで調べてみますと、例えば不法就労助長罪がつくられてから三年間で不法残留というのはむしろ三倍近く増加しているんですね。それから、不法入国幇助罪が導入されましてからも不法入国者というのが四〇%以上の増加ということになっております。重罰化したりあるいはいろいろなこういう犯罪の罰則を強化することによって効果が本当に上がってきたんだろうかという感じがいたします。むしろ、増加をしたりあるいはどこかに潜り込んだりというようなケースをふやしただけなのではないかというふうにも思われるんです。

 今回も不法滞在というものを新たに処罰するということになりますが、これまでの経過を踏まえて、今回の新たなる処罰規定の導入というのがどういう意味を持つんでしょうか。本当に効果が上がるとお考えなのか、これまでの経過を踏まえて、いかがですか、大臣。

国務大臣
(陣内孝雄君)
 不法就労助長罪は、委員御指摘のように、平成元年の入管法の改正により新設されたものでございますが、施行後約九年を経過したわけでございます。警察庁の統計によれば、同罪の検挙件数は平成六年以降近年の十年までの間、年間約三百人から五百人の間で推移しております。この不法就労助長罪の新設というの は、不法就労助長を抑制し、ひいては不法滞在の抑止にも効果を上げているものと、このように考えております。

 また、集団密航助長罪については、これについてちょっと申し上げますと、平成九年に新設され、現時点で法改正の実効性を具体的に判断するということは大変困難ではありますけれども、不法入国に対する抑止にはなっているものと、このように考えております。

 今回の不法在留罪の新設によりまして、平成元年及び九年の法改正と相まって不法入国等の防止に一層の効果を上げ得るものと、このように期待しておるところでございます。

千葉景子君  大臣は大分御期待を込めておっしやっておられますけれども、ただ、これまでの経過などを見ますと、本当にどれだけ効果が上がるものか。それから、従来から言われておりますけれども、処罰規定があったからとて、すべてを検挙し処罰をするということも不可能なわけですね。そういうことも考えますと、いささか私は疑問である。

 それと同時に、疑問である以上に、この不法滞在罪というものが極めて、前回も議論がなされておりましたけれども、犯罪の性格として、犯罪類型としてわかりにくいということが言えようかというふうに思うんです。

 もうこれは繰り返しになりますのであれなんですけれども、これまで不法入国に対しての処罰規定はございました。それは入国をすること自体が違法だということで、後は時効が進行していくという形ですね。そのいること自体、滞在をしていること自体を毎日毎日、もう瞬時瞬時を違法であるということで処罰の対象にはしてこなかったわけです。

 今度はそれを処罰しようとするんですが、不法入国ということと不法滞在というのは一体どういう時点から不法滞在という行為が始まるということになるんでしょうか。

 それで、不法入国という処罰類型がある。そうすると、入国した一瞬から今度は不法滞在という行為にころっと変わっちゃう、こういう考え方なんでしょうか。ちょっとどうしてもここの構造がいま一つはっきりしない。わかりやすく説明いただけますか。

政府委員
(松尾邦弘君)
 刑事罰の成否と適用の問題にかかわりますので、私の方からお答えをさせていただきます。

 まず、後段の方の御質問にあります不法在留行為はいつごろから成立するんだろうかと、不法入国行為との関連の問題が一つあろうかと思います。

 これについてまず申し上げますと、不法入国というのは、講学上といいますか、通常刑事的な言い方では即成犯と言われております。これは法の予定する法益侵害が生じたことによって完成、完了するというふうに通常定義されております。

 したがいまして、この不法入国罪は旅券等を所持せずに本邦に上陸しようということで、例えば船で来ますと、領海に入った段階で即時に成立するということでございますので、その段階で既に既遂になっているということでございます。

 その次の問題ですが、じゃ、その者が、船が港に着きまして上陸し、その後例えば結果的には一力月後に東京で生活しているところを検挙されたような場合、どこから不法在留罪といいますか、それが成立するのかというのが確かに問題になります。

 それにつきましては、抽象的に申し上げるというのはなかなか申し上げにくいわけですね。最終的には個別事案ごとに検討されるべき事案というふうには考えます。抽象的に申し上げますと、言い方としましては、これも従来入管局長から御説明の中で御答弁申し上げたことなんですが、上陸後の時間的経過、場所的移動及び滞在の態様の変化等を総合的に考慮して判断されるべきものであるというふうになるわけでございます。

 もうちょっと具体的に申し上げますと、例えば上陸をして港で一服しているときに捕まったらどうなるんだと。これはやっぱり上陸行為、つまり不法入国行為の中でまだ評価されている行為なのではないかなと私は思います、仮にそういう形を想定しますと。

 ところが、この人が迎えの車に乗ってもう移動を始めた、もう入国の港からかなりたっている、時間的にも経過している。こういうことになりますと、不法在留罪についてはもう着手があるといいますか実行行為の一部が始まっているというふうに見られる場合が多いのではないかなと思います。犯罪の成立については、大体そんなような概念をお持ちいただければよろしいかなと思います。

 それからもう一点の、今回なぜ不法在留罪を設けることになったのかということでございますが、これについても刑事局としては犯罪を新しくつくることになりますので、入管当局と同じように検討させていただきました。

 確かに、刑事的な観点からいいましても、外国人の入国管理あるいは在留管理というのはその時々の諸情勢によって必要な制度あるいは必要な措置、あるいは必要な刑罰法規が整えられるべきものだろうと思います。

 従来は、短期滞在等の後不法に残留する行為については残留罪という形で設けてありました。ところが、不法入国する者については、入国後、これは先ほど即成犯といいまして、犯罪が成立して、その後は時効が進行するわけでございますが、その後の行為につきましては犯罪の対象とはしてこなかったことはそのとおりでございます。今回は、その後の行為も犯罪の対象にしようということでございます。

 それで、なぜこういうことになったのか。やはり一つは外国人の在留管理あるいは入国状況の変化というのが刑事的に考えてもあるかと思います。従来から入管局長がお答えしてきたと思いますが、不法入国あるいは不法上陸後、不法に在留するという外国人の数は、経年で見ますとやはり推移がありまして、従来は比較的少数にとどまっていたというふうに思われます。その後、むしろ短期滞在等から不法残留するケースが多かったものですから、その対応をするということが当面の重要な国の施策だということになっておったかと思います。近年は、これは刑事的にも非常に大問題でございますが、船舶による集回密航事案というものが急増しております。

 それで、我が国に不法に在留する外国人というのが率にしましてもかなり激増するという、場合によってはそういう言葉を使ってもよろしいかと思いますが、そういったような状況の中で、やはりこの不法な入国とその後の在留行為も処罰の対象にすることによって全体としてこういう不法入国事案を抑制する、あるいはその在留管理の適正を期するという必要が生じてきたものと刑事局としても考えまして、今回の法改正で不法在留行為についての犯罪化ということについては積極ということで考えさせていただいているということでございます。

外国人登録法・出入国管理法の改正案への質疑(5/13) 3/3
千葉景子君  御説明をいただいても、まず犯罪の成否、成立がどういう形でなるのかというのも、犯罪の成否ですから、罪刑法定主義ということから考えても厳格にならなければいけない。どうもそこがはっきりしない。それから、従来にプラスして不法滞在の部分をよりまた処罰の対象にする。それによる何か効果、どういう法益がこれまで以上に守られていくのかというのがいま一つやはりはっきりしない。

 結局は、不法入国というのは三年間の時効にかかりますね。ただ、逆に言えば三年間は処罰をすることが可能なわけです。どうもその幅を三年間じゃなかなか見つけにくいからもう少し長い間でも検挙をし、処罰をできるように何とかできないものか。どうも時効の延長の一つの手段のような形にされたのではないかという気がしないでもありません。

 しかし、これはこれ以上論議をしていても多分そうだとはおっしやらないと思いますので、私の 意見として、考え方として申し上げておきたいというふうに思います。次に、再入国許可制度についてお尋ねをしたいというふうに思うんです。

 この再入国許可制度については、今回一定の緩和がなされました。しかし、改めて考えてみますと、規約人権委員会の意見の中でも、この問題についても大変重要な指摘がされているわけです。これは、日本で出生した在日韓国・朝鮮人のような永住者に対しても裁量による再入国許可の制度をとっているというのは、自国に戻る権利、こういうものを侵害するおそれがあるのではないかという大変貴重な指摘がされております。

 確かに、永住者、特別永住者であっても、日本の場合には血統主義もとっておりますし、すぐに日本の国籍というのを取得できるわけではない。外国人という国籍のない扱いになるわけですね。しかしながら、ここの指摘にもありますように、日本で生まれ育ち、そしてさらにはその二世、三世というほとんど日本を母国と、母国と言うとあれですけれども、生まれ育った自分の地域というふうに考え、そしてもうそれが当たり前になっているような皆さんについては、本来戻るところといえば決して外国ではなくてやっぱりこの日本だということが事実上は言えるというふうに思うんです。

 そういうことについて、一般の外国人と同じような位置づけ、そして戻ってくるために、いわば一回出て日本に入国をするといことは自分の国に戻るといことではなくて日本の国にまた入ってくることと同じだよということで再入国許可制度というのを設けているといのは、私はやはり非常に国際的な人権規約あるいは国際的な議論、指摘、こういう意味からも大変問題があるのではないかというふうに思います。

 そういう意味では、この再入国許可制度、これは緩和をされたとはいいますけれども、基本的な考え方を改めることによって、裁量による再入国なんだということではなくて、自分の国に帰ってくる権利として再入国許可制度を永住者あるいは特別永住者などにはもう適用しない、廃止することを検討すべきではないかというふうに思いますが、大臣いかがですか。

国務大臣
(陣内孝雄君)
 再入国許可制度については、もう委員、専門家として重々御承知のことでございますけれども、我が国に在住している外国人が一たん出国する場合には、本来在留資格を失い、再び入国するに当たり改めて上陸手続をとらなければならないということになるわけですけれども、再度我が国に入国しようとするときは、その上陸手続を簡便にするとともに、再入国した後は従前の在留資格及び在留期間等を継続させるためにこの制度があるわけでございます。

 したがいまして、永住者または特別永住者についてもこの事情に変わりはないものと考え、再入国後はその法的地位のまま入国し引き続き在留できるという効果があることから、この制度は必要かつ合理的なものであると考えるところでございます。

 なお、この制度については最高裁の判決でも是認されておるところでございます。

千葉景子君  その必要かつ合理的というのは、私には全然理解しがたいですね。先ほど言いましたように、実態からいいましても、それからさまざまな国際的な基準ということを考えてもどこが合理的なんだろうかといことを思います。必要なのかといことですね。

 それから、ドイツなどでも血統主義をとっておるんですけれども、一定の定住性のある外国人、要するにドイツの国籍を持っていないわけですね。しかしながら、いわゆる自国へ、自国といいますか、戻ってくる権利というものを保障するということを既に実行しているわけです。

 よく私がこの質問をいたしますと、御説明くださるときに、いやこれはほとんど定住外国人の皆さんが二世、三世で旅券を持っていない、この再入国許可書を持っていると大変便利なんだというお話をされるんです。あたかも何かそれがこれを残しておく非常に便利な理由のような御説明もいただくんですけれども、これはそういう便利な必要があるならば、基本的にそれに即した、改めて外国へ行って戻ってくるときに便利な証明書をつくればいいわけで、これをやっぱり一般の外国人、改めて入国をしてくる外国人という位置づけで存続させておくということには、私は合理性そしてまた必要性というのはもう既に欠いているのではないかというふうに思います。

 大臣、先ほどお答えはいただきましたけれども、いろいろなこういう状況を踏まえて、じゃ、きょうやりなさいと言ってもなかなか難しいのかもしれないけれども、検討する余地はあるんじゃないですか。あるいはいろいろな制度など外国の例あるいは国際的な条約、そういうことも踏まえながら、大臣もせっかくですから少しお考えになってみたらいかがかと思いますが、どうでしょうか。

国務大臣
(陣内孝雄君)
 今ドイツ連邦共和国のことをお引きになってお話しいただいたわけですけれども、ドイツ連邦共和国におきましては法改正を行ったわけでございますけれども、一九九〇年ですか、その際のポイントは、いわゆる二世及び三世などの長期在留外国人の社会への統合、すなわち帰化を促進させようというのが一つの大きなねらいであったように私は理解しております。それからまた、長期在留を目的とした外国人の新規入国の制限、そしてさらに、欧州共同体内における人の移動の円滑化、こういったものが柱になっておると理解しておるわけでございます。

 我が国についてどうかという貴重な御意見を賜ったわけでございますけれども、法務省といたしましては、先ほど御説明申し上げましたように、この制度は必要かつ合理的なものであるというふうに考えておるわけでございます。

千葉景子君  今の御理解、もう一回それは少しお勉強をし直していただきまして、その理解は私はちょっと誤っているんじゃないかというふうに思いますので、そこは改めて少し勉強いただきまして、やはりこれを今後の大きな検討課題として考えていただきたいというふうに思います。これは要望しておきます。

 時間も限られてまいりましたので、もう一つお聞きをいたします。

 強制退去後の入国について一年から五年に延長されようということでございます。これもいろいろな議論がございました。私はこれについても異論はございますけれども、少なくとも私は三点、問題点を指摘しておきたいといふううに思うんです。

 これは再入国、強制退去になりましてから、これまでは一年たてば一定の入国の可能性が出てきた。ただ、一年ですぐ入国を認められていたかというと、これは別ですよ。ただ、可能性としてはそういう条件でありました。今度は五年ということになるわけですから、これは大変長い期間ですね。

 一点は、今度、退去強制の手続、それからその判断、これをやっぱり厳格にきちっとまずやる必要がある。これまでは一年たてばまた入国できるから、まあいろいろあるけれども、一回出国してまた戻っていらっしゃいというような扱いが結構あるわけですね。こういうことは今度はできないわけですから、本当に厳格に考えていただきたい。

 特に、私のもとにもいろいろな御相談もありますけれども、今ビジネスの面でもいろいろな勉強の面でもそれから活動の面でも、非常に多様な活動を日本に来てされているわけです。これを一つ一つ見ますと、就労なのか、稼いでいるんじゃないかと疑われて、いや全然そういうことではない、こういう問題なども微妙なところがあるわけです。ですから、従来のように微妙なときには一たん出国して入国をしてくださいなどという取り扱いはできないということになりますので、この点を厳格にきちっとしていただきたい。

 それから、短期滞在などは更新というのも可能なんですね。ただ、これもやっぱり現実的にはま たいらっしゃいという形でなかなか更新というのは、手続上も面倒なこともありますし、やりにくい。これからはこの更新という問題も十分にその滞在の内容あるいはその適法性ということも考えて、更新ということにも十分な私は配慮をしなければいけないというふうに思います。

 それから、これはずっと皆さんからも指摘がございました。やはり家族の結合の権利、こういうものをきちっと尊重する。逆に言えば保障するという意味で、これは私はこの権利を認めて当然の滞在資格を認めていくべきだというふうに思うんです 例えば特別在留の一つの例をあるいは幾つかの認めるべきものを法定化する、あるいは類型化をして、例えば家族の結合というものについては当然特別在留を与えるというような形で、単なる自由裁量に任せることなく厳格に対応するということが私は必要だというふうに思います。

 とりあえずこの三点、どうでしょうか、改めて今後どういう考え方をとっていかれるか、大臣にそのお考え方をお尋ねしておきたいと思います。

国務大臣
(陣内孝雄君)
 このたびの上陸拒否期間が一年から五年に伸長されるに当たって留意すべき大事なポイントを御指摘いただいたわけでございますけれども、この問題につきましては、まず第一点の退去強制の手続、判断をきちっとすべきではないかということについては全くそのとおりだと思いますし、また第二点の短期滞在の更新手続についても適正に行われなければならないというのも御指摘のとおりだと考えます。

 三点目の自由裁量による特別在留許可とかそういうものについての基準等をもっと明確化していくべきではないかという御指摘につきまして、私どもといたしましては、非常に個別の事情が違うというようなこともありましてなかなか具体的な判断基準というのは示しがたいんじゃないか。むしろそのことによって、いろいろ個々の抱えておられる事情を酌みにくくする面も場合によっては起こるかもしれないということを私個人として考えるわけでございます。

 そういった中で、特に過去強制の方が問題でございますけれども、人道上の見地などから特に十分な配慮をしながら適正な運用を図っていく必要がある、このように考えておるところでございます。

千葉景子君  ちょっと時間がございませんのでここまでにいたしますけれども、この点について、特に最後の基準の明確化などについては、私はぜひ具体的に示せるようにしていただきたいというふうに思っております。

 最後、これはお答えは要りません。外登法、指紋押捺拒否をされてこれまでさまざまな不利益などをこうむってきた皆さんの救済、原状回復、これについてはぜひ法制度あるいは何らかの具体的な措置をもって実行していただきたい。

 従来から言われておりましたように、本当に最初に苦労をみずからしょって先鞭をつけた、あるいは井戸を掘った、こういう皆さんに対してこれが私たちがやるベき大きな責任ではないかというふうに思います。その点についてはぜひ法務大臣に特段の英断をお願いしたい、これを要望して、質問を終わります。

国務大臣
(陣内孝雄君)
 承りました。



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