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裁判所職員定員法・一部改正案についての質疑 [法務委員会] (1999.3.30)
裁判所職員定員法・一部改正案についての質疑 1/4
千葉景子君  本日は、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の質疑ということでございます。

 この裁判所職員定員法、これまでの毎年の質疑あるいはその経過をちょっと振り返ってみますと、その都度かなり共通のというか、同じ問題点 あるいは疑間が呈せられ、繰り返し毎年質疑がされている、会議録などを繰ってみますとそういう感じがいたします。

 きょうもそういう意味では同じような繰り返しの部分が出てこようかと思うんですけれども、せっかくの機会でございますので、そもそも司法のありようというのはどんなことかということから少し論議をさせていただき、その中で定員あるいは裁判所のシステム、こういうものがどうあったらいいのか、こういう議論を少しさせていただきたいというふうに考えております。

 そこで、これはもう本当に根本的な問題になろうかというふうに思いますけれども、一体司法の役割とはどういうことかということを改めて考えてみました。

 日本国憲法のもとにおける司法の役割、ちょうど憲法が施行されましてから司法制度も一新され三十年余りが経過をしているわけでございます。

 この司法の役割というのは、私が大きく理解をするところは、やはり一人一人の人間が人間として尊重され、そして安心して幸せに生活できるように公正で公平に法が適用される、そのために法的な裁判システム、司法のシステムというのがきちっと確立をされていなければいけないということにあろうかというふうに思います。

 さらに、それを少し個別に考えてみますと、例えば私人間においては紛争を適正迅速に解決してそれぞれの権利の実現を図る、こういうことが一つ言えようと思います。

 それから、刑事手続面を考えてみますと、被疑者、被告人の人権を保障しながら刑罰法令を適正に適用してそれぞれの社会的な秩序を維持していくということがあろうというふうに思います。

 それから、三権という均衡の面から考えますと、やはり行政が法に従って適正に機能するように法の運用などをチェックするということが一つあろうと思いますし、今度は立法との関係を見ますと、違憲立法審査権というのがございますので、やはり憲法に従った立法がなされているかチェックする、そういう機能もあろうかというふうに思います。

 それ以外にも個々ございますけれども、大きくこんな点が基本的な問題点として挙げられようというふうに思うんですけれども、こういうことにきちっと対処するためには、やはり司法というものが十分に機能している、それからそれが国民にとっても満足できるものであるということが必要であろうというふうに思います。とりわけ、裁判所については、こういうことをどこにも左右されず、あるいはどこに気兼ねすることなくきちっと判断をするという意味では独立性などが強く保障されているということになろうかというふうに思うんです。

 こういう理念とかあるいは機能、こういうものを十分に発揮するためには、やはり最高裁あるいは法務省としても、それぞれ司法の一翼を担うという立場で、二十年以上司法制度も経過をしているわけですから、この間、一歩でも二歩でも前進をさせる、あるいは充実を図っていくというためのさまざまな取り組みが当然なされてきたものというふうに思います。今、いろいろな問題点も指摘をされているところではありますけれども、これまでの五十数年の中で一体どんな努力あるいは取り組みがなされてきたんだろうか、改めて今感ずるところでございますので、それぞれ最高裁それから法務省の立場でこれまでどんな努力をなさってこられたか、まずお率ねをしたいと思います。

最高裁判所長官代理者
(浜野惺君)
 委員御指摘のとおり、司法の役割は、国民の間の私的紛争を解決し、権利の実現を図ること、適正手続のもとで刑罰権を行使して社会秩序の維持を図ること、さらに三権分立の原則に立脚した上で司法権を行使することにあるものと認識しております。

 裁判所といたしましては、このような司法の役割、すなわち国民のニーズと期待を踏まえつつ社会経済情勢の変化、国民の権利意識の変容等に対応しながらこれまで手続制度の整備、組織、機構の整備、事務改善等に関する種々の改善、改革の方策を講じてきたところでございます。

 具体的に申し上げますと、日本国憲法の施行後、各種組織、機構の整備、訴訟手続法の整備等が図られたわけですが、その後もまず手続制度の整備の面でいいますと、民事手続の領域では民事執行法、民事保全法の整備とこれに基づく運営改善、最近で申しますと民事訴訟法の改正に基づく審理の充実、少額訴訟手続の導入等を図ってまいりまして、利用しやすい裁判の実現に向けての努力を重ねてまいったところでございます。

 組織、機構の整備の面でいいますと、人的体制の整備、物的設備の拡充、社会情勢の変化を踏まえました裁判所の組織、機構の見直しといった施策を進めてまいったところでございます。

 事務改善の面では、執行事件や大都市簡易裁判所の事件処理のためのシステムの導入などOA機器による事務の効率化を図るほか、テレビ会議システムの導入などを行いまして、より利用しやすく効率的な裁判の実現を図るための方策を講じてきているところでございます。

 裁判所といたしましては、今後とも司法の役割、国民のニーズを踏まえながら、より適正で迅速な裁判、利用しやすい裁判を実現するための努力を続けてまいりたい、かように考えております。

国務大臣
(陣内孝雄君)
 今、委員がおっしゃいましたように、法務の役割というのは国民の一人一人が人間として尊重される、あるいは幸せな生活ができるようにするために、適正で迅速な法の執行をしていくということだろうと思います。そのために、今おっしゃいましたように民事、刑事あるいは行政、違憲立法審査の問題、そういう間題についてしっかりと取り組んでいかなきゃいかぬと思うわけでございます。

 法務行政を所管する立場からこれまでどういうことに取り組んできたか、こういうことになりますと、民事、刑事の基本法の整備、検察体制の充実強化、それから今お話がございましたけれども、裁判所の充実強化への協力等の努力を通じまして司法全体の機能の充実強化を図ってきたところでございます。

 最近については、これも既にお話がございましたけれども、裁判所及び司法試験法の一部改正による司法試験合格者の年間千人程度への増加、法曹人口の拡大ということでございましょうか、あるいは民事訴訟手続の改善のための民事訴訟法の改正、これは迅速な訴訟を可能にする手続、あるいは少額訴訟手続の制定、こういうものを図ってまいりましたし、裁判官、検事の増員等さまざまな施策を実現してまいったところでございます。

 今後とも、司法機能の充実強化のためには意欲的に適時適切に取り組んでいかなければならない、このように考えております。

裁判所職員定員法・一部改正案についての質疑 2/4
千葉景子君  それぞれお取り組み方、今お話はお関きをいたしたんですけれども、これだけ大きな五十年という一つの時代のサイクルでございますけれども、そういう中で取り組まれてきた、いかにも何か消極的な感じがしないでもありません。

 例えば、組織、機構というのも、人的、物的な増員なりあるいは施設の整備というようなことは最高裁の方からもお話がございましたけれども、後ほどお話も伺いますけれども、では十分に対応し切れるような人的な措置が本当に努力をされてこられたのか、積極的に取り組まれてこられたのかということを考えますと、いささか私も物足りぬというか消極的だったという感じもしないでもございません。さまざまこういう努力があったようではございます。

 ただ、今度はこの五十年を振り返ると同時に改めて現状を考えますと、こんなのんきなことを言っている場合ではないという時代でもあるわけです。このところいろいろな問題が指摘をされておりますけれども、 一体今の時代の状況を司法という側面からどういうふうに認識されているのだろうか、本当にわかっておられるのかなと、失礼な言い方ですけれども、そういうことも感ぜざる を得ないところでございます。

 例えば、今盛んに言われておりますけれども、規制緩和というような流れが大変強まってございます。しかし、これは単に規制が撤廃されればそれでいいというわけではありませんで、むしろそのためには大変適正なルール、公平公正なルールが必要ですし、そういう中でいろいろな情報や立場の格差によって権利が侵害されやすい、そういうものに対する措置というものも当然規制緩和とセットで考えておかなければいけない、こういうこともあろうかというふうに思います。

 それから、経済界でも大型の倒産などがふえたり、あるいは今問題になっている金融不良債権など、法的な処理が必要なものが大変増加をしている。市民にとっても企業のリストラとか消費者のさまざまな問題、あるいは金融商品が非常にふえてそれによるトラブルなどがふえて、これも法的に対処しなければいけない部分がたくさんある。あるいは、どうも私たちも残念なことではございますけれども、行政や政治の場を考えてみますと、不祥事や官官接待と言われるようなものがあったり、情報隠しなどを含めて薬害問題などが発生してきたり、談合体質があるとか癒着構造があるとか、やはりもっと透明度のあるルール社会というものがこれまた求められている。本当に大きな課題を抱えて、その前に司法というのも直面しているという状況があるというふうに思うんです。その辺はどう認識なさっているのか。

 そして、こういう時代に向けて、今お話を伺ったように多少いろいろな取り組みはされてきたということがございますけれども、その程度じゃなくて抜本的ないろいろな構造転換、システム転換が求められているんじゃないか,もしもっと迅速に積極的に意欲的に自己改革に努め、あるいはこういう時代感覚をしっかりと受けとめて司法というものが機能してきたら、今の司法に対しての大変な批判や、あるいは改革を外から実現していこうというような動きは本当は出てこなかったんじゃないかと思うんです。やっばりみずからそこにメスを入れられなかった、あるいはやってこられなかった、そういう面が私は多分にあるのではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

 こういう時代認識を踏まえて最高裁としては一体どうしようとされているのか、あるいは法務省としても一翼としてどういう側面から協力体制をつくっていこうとしているのか、お問きしたいと思うんです。

 最高裁も、こういう時代に当たっては、本来であれば私は、いろいろな国会とそれからこれまでの慣例等も含めてあるかとは思いますけれども、やっぱり最高裁の姿勢としては、事務総長なりが最高裁というのはこういうふうに取り組んでおります、国民とともにこれからも歩んでいきたいというくらいのむしろアピールをしなければいけない、そういう時代でもあろうかというふうに思うんです。そういうことも合めて、御認識、考え方をお尋ねしたいと思います。

最高裁判所長官代理者
(浜野惺君)
 委員御指摘のような社会経済情勢の変化を反映いたしまして、紛争を公正、透明な手続で法的に解決することに向けての国民の意識と期待が高まってきているということは十分認識しているところでございます。

 裁判所といたしましては、これまで我が国の司法は、公正な手続に基づきまして私的な紛争を解決するという使命を果たしてきたものと考えております。しかしながら、先ほども申し上げましたように、社会経済情勢が変化する中で新たな法的ニーズが生まれていることから、このような法的ニーズの多様化あるいは専門化に対応いたしまして、より広い観点から司法制度全般の機能のあり方について検討し、より適正で迅速な紛争解決を実現するための工夫と改善に取り組んでいく必要があるものというふうに考えているところでございます。

 具体的に申しますと、紛争の発生から解決に至るプロセス、さらには紛争予防をも視野に入れた上で、紛争の種類と段階に応じた法的ニーズに対応できるような法的紛争解決のメニューの構築を検討していく必要があるというふうに考えております。

 このような観点からいたしますと、訴訟手続、倒産処理手続、執行手続といった裁判所におきます手続に限らず、法的紛争解決のための多様なメニューを視野に入れた上で、広く司法制度全般について、我が国の法的紛争解決システムが社会の法的ニーズの変化にどのように対応しているか、今後どのように対処してその基盤づくりに努めていくべきかについて実証的かつ多角的な検討が必要であろう、かように考えているところでございます。

国務大臣
(陣内孝雄君)
 委員御指摘のとおり、今日の我が国社会におきましては、市民生活の側面におきましてもまた企業活動の側面におきましても司法によって解決されるべき事件が増加して、しかもまたその内容も複雑化、高度化してきている、こういうふうに認識しております。

 さらに二十一世紀に向かいましては、これまた委員御指摘なさいましたように経済がグローパル化してまいる、そういう国際的な市場競争が強まり規制緩和等が行われていく中で、国民の権利、利益、こういうものをどう擁護していくか、人権を保護していくかという問題が高まってくるだろうと思っております。言ってみれば、事前規制型の社会から事後監視型の社会に移っていく、こういう中での社会の諸活動が公正かつ透明なルールに基づいて行われるようにしなければならないということだろうと思います。

 国民一人一人の権利が十分に守られるという必要性が高まってくるわけでございますので、このような社会のさまざまな変化、要請に対応するために、これから司法制度全般にわたる改革、その機能の充実強化が不可欠であろう、こういうふうに認識しております。そういう認識のもとに、これから法案でお願いしたいと思っております司法制度改革審議会等が設置できれば、そういう中で対応する方向を見出していかなければならないだろう、このように考えておるところでございます。

千葉景子君  最高裁でも認識はお持ちであろうというふうに思いますが、今の段階で実証的、多角的にと、いささかちょっと、これまでにそういうことを十分にやって、そろそろ結論が出て、こういう方向でこういうことをお示しいただくぐらいの体制が本当は必要ではないかというふうに思うんです。

 司法のあり方、それから新しい時代に即応した司法ということで今いろいろな意見がありますけれども、そういう中で、経済界からも御意見もあり、あるいは司法に携わっている弁護士会などからの意見もあり、あるいはいろいろな消費者サイド、さまざまな御意見がございますが、共通して皆さんが求めること、それから少なくとも改革の基礎となる柱としてやっばり司法そのものの容量が絶対的に少ない、この司法の容量をいかに拡大するかということが一つあると思うんです。

 多様な課題に、あるいはまた迅速な判断をするためにも司法の容量というのが余りにも少な過ぎるという意見、それから、市民社会と乖離があり過ぎるのではないか、そこに密着した開かれた司法というものの体制が必要ではないかということが根底にニーズとしてあるんだろうというふうに私は思っています。その司法の容量の増大ということを考えますと、毎年毎年議論をさせていただいております定員法、定員の問題、これはまさに司法の容量の基本的な柱ということになるだろうというふうに思うんです。

 そこで、少し定員の問題について具体的にお伺いをさせていただきたいというふうに思うんですけれども、裁判官とか裁判所職員の定員というのは一体これは何ですか。まず、そこからお聞きしたいんです。

高裁判所長官代理者
(浜野惺君)
 まず前提として、委員が御指摘の司法の容量について申し上げますと、先ほども申し上げましたように、社会 経済情勢の変化に伴いまして国民の法的ニーズといいますものが多様化、専門化してきております。そういうような法的二ーズの変容に対応するためには、先ほども御説明いたしましたように、非常に広い観点から司法制度全般の機能のあり方を検討していく必要があるではないか、そういう検討を踏まえて適正迅速な紛争解決の工夫及び改善を検討していく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。

 委員お尋ねの裁判官あるいは裁判所の定員ということも、今申しましたような大きな観点から申しますと、言葉で言いますと裁判官あるいは裁判所職員の必要人員数を定める枠ということでございますが、もう少し具体的に言いますと、裁判所に提起される事件数の動向、これが先ほど申し上げております国民が裁判所に持ち込む法的ニーズ、あるいは裁判所の側で言いますと仕事の量のベースになっているということでございます。

 ただ、これを基本に考えますけれども、このほかに例えば訴訟運営改善とか当事者の訴訟活動による協力、こういうような事件の処理にかかわる諸施策、あるいはそのほかに事件の処理状況、こういうものをあわせまして総合的に考えていくべきものである、こういうふうに考えているところでございます。

裁判所職員定員法・一部改正案についての質疑 3/4
千葉景子君  そうすると、定員というのは、今基準のようなものも御説明いただいたような気はするんですけれども、結局どういう基準で定められるものなんですか。それで、その基準にのっとると現在の定員というのはその基準に合致するものだというふうに考えられるんですか、どうですか。
最高裁判所長官代理者
(浜野惺君)
 ただいまも御説明いたしましたように、基本的には、一般的に組織等におきます必要人数を定めますには、仕事の量というのがベースになるものと思われます。

 裁判所におきます仕事の量は、裁判所に提起されます事件の件数が基本になっているわけでございます。いわば事件の新受件数ということが基本になっております。これに個々の事件の処理状況や先ほど御説明しましたような事件処理にかかわる諸施策等を踏まえまして、総合的に検討しているというところでございます。

千葉景子君  基準があってないようなものだというふうに思うんです。今、仕事の量というのが一つの基準であって、裁判所でいえば事件数のようなものも一つの基準だと。

 そうなりますと、ちょっと私もそれを見てきたのですけれども、いろいろ数字があろうかというふうに思うので、もし大きく誤っていたら御指摘いただきたいと思うのです。

 例えば、平成元年と平成九年を比稜してみますとい新規の民事、行政の普通事件、これが平成元年が六十五万一千四百五件、平成九年には九十五万八千九百三十一件。六十五万から九十五万とこれだけ事件数としてはふえておる。執行事件なんかは、元年の十九万五千から九年だともう三十二万八千件、こういう数字。破産などは、平成元年の一万件ちょっとから平成九年の七万件です。こういう状況です。刑事はそんな極端にふえることはないかと思います。

 それで、今度は裁判官の数がどうなっているかというのを見ますと、平成元年二千十七、そして平成九年二千九十三。事件数は大変なる増加なんですけれども、裁判官の数はたったの百人もふえていないという状況です。

 先ほどの仕事の量、件数などがある程度基準になって、そればかりではないということですけれども、定員というものがある程度検討されるあるいは数が出されるということになりますと、余りにもこれは乖離があり過ぎるのではないか。別に事件数だけで考えているということではないというのはわかりますよ。それから、そうはいっても一気にはふやせないんだというようなお話もあるかというふうに思うんですけれども、どうなんですか、これはふやしたいけれどもふやせないという状況なのか、あるいは事件数などから見てもこれで十分適正なんだというふうにお考えなのか、その辺、率直にどうなんでしょうか。

最高裁判所長宮代理者
(浜野惺君)
 まず、事件数の増加から御説明させていただきますと、民事訴訟事件数、これは大都市部を中心にこのところ増加しておりまして、特に地裁の民事通常事件数は、平成十年度において過去最高の事件数に達しております。しかも、事件内容は複雑、困難化しておりまして、それに伴いまして裁判官の裁判事務の負担は増加しております。

 知的財産権の侵害訴訟事件の新受件数も平成四年以降急増しておりまして、特に全国の約半数の事件を取り扱っております東京地裁におきまして、このような事件の増加傾向が顕著でございます。東京地裁におきましては、内容的にも難しい事件がございまして、ここでの体制の強化が急務であるというふうに考えております。

 また、委員御指摘の民事執行事件、これは平成三年以降、大都市部の裁判所を中心に、経済不況に伴い不良債権の回収を図ろうとする金融機関等の申し立てに係る不動産執行事件を初めとして急増しております。特に不動産執行事件では、権利関係が複雑な物件が増加するなどして負担が増しておりますが、国民の権利の最終実現の観点から迅速な処理が要請されているというふうに認識しております。

 破産事件の新受件数は、平成二年から平成十年度までの間に約九倍に達しまして、十一方件を突破いたしました。 ローン、クレジットによる個人の自己破産事件が激増しているのに加えまして、深刻な経済不況の長期化を反映して、企業破産事件も増加を見せているとともに、規模も大きくなっております。特に、大都市部の裁判所を中心として事件の大型化が顕著になっておりまして、極めて多数の利害関係人が介在して、内容的にも複雑、困難な問題が発生するということで、この点につきましても裁判官の事務量が著しく増加しております。

 裁判官につきましては、このところ継続的に毎年相当数の増員要求をお願いしているところでございますが、今御説明いたしましたような、委員御指摘のとおりの事件の動向でございます。こういう事件の動向に対処していきたいという観点から、司法修習生からの任官希望者等の数も踏まえまして、平成十一年度には昨年度を十人上回る三十人の裁判官の増員をお願いしているところでございます。

 また、過去から現在までの裁判所でお願いしているいわば増員の実績でございますが、確かに、今委員の御指摘のとおり、あるいは私が御説明させていただきましたとおり、このところ民事事件のみならず刑事事件も含めまして全般的に裁判所の事件の増加傾向が見られるところでございます。裁判所といたしましては、このような事件動向に適切に対処するために裁判官の増員を着実に図ってきたところでございまして、その増員数を見ていただきますと、平成十年までの十年間で百六名の裁判官の増員をお願いしてきたところでございます。これとともに、民事訴訟の運営改善を進め、新民事訴訟法に沿った運用の定着も図ってきているところでございます。

 このような成果もありまして、例えば東京地裁の単独の一人の持ち事件というもので見てみますと、東京地裁の単独の民事訴訟事件、 一時は裁判官一人当たりの手持ち件数が二百七、八十件近くに及びまして、裁判官の負担も大変重くなっていたということでございますが、東京地裁民事部の最近の資料によりますと、単独の訴訟事件の手持ち件数が二百十から二百二十件程度にまで何とか改善されてきている状況にございます。今回の裁判官の増員をお認めいただきますれば、さらにこれを改善することができるものというふうに期待しているところでございます。

 裁判所といたしましては、今後ともかような事件動向を踏まえて、より一層適正迅速な裁判の実現を図るために必要な増員を図ってまいりたい、かように考えております。

裁判所職員定員法・一部改正案についての質疑 4/4
千葉景子君  一生懸命ということは別に否定はしませんけれども、抜本的にこれは違うんじゃないかという気がするんです。今、事件数もようやく手持ちが二百ちょっとといっても、これは大変なことです。それから、裁判官も少しずつふえてきた、毎年お願いをしておりますというお話ですけれども、そういうことではなくて、やっばり抜本的に司法あるいは裁判に携わる者をふやしていく、そういうシステムの転換というものを本当に考えなければ、毎年少しずつお願いしますというだけではこれはますます市民からも司法というものが逆に言えば見離され、そして裁判所が努力をされてもそれとは全く連った方向へ論議が進んでいくというようなことだってあり得ると思うんです。この際抜本的な改革に向けて裁判所としても取り組む、そういう姿勢をやはりお持ちにならなければいけないのではないかというふうに思います。

 今度の定員法の改正を見ましても、増員の理由としては、民事訴訟事件の増加、民事執行事件の増加、破産事件の増加、知的財産権事件の増加と、そのとおりだと思うんです。ただ、それで出てくるものは、判事補の多少の増員と、それから知的財産権事件の増加については調査官をほんの数名増加するということです。こういうやり方では私はもう破綻を来していくという気がいたします。裁判所を責めようというんじゃなくて、むしろその機能を積極的に担っていただきたい、そういう意味から申し上げているわけです。

 そういう意味で、今すぐにでも採用といいますかやり得る手段として、例えば弁護士任官の制度がございます。これは、弁護土の側にもいささか消極的な部分があり、制度はあってもなかなか任官者が少ないということも閲いております。ただ、もしこれを本当に本格的に考えようとするのであれば、例えば任地とかそういう面での条件を整備していく、そういうことも必要であろうというふうに思うんです。それから、任官してしまうというのがなかなか難しいとすれば、やはりそれを補うような形で非常勤の裁判官制度というようなことに積極的に取り組んでいくことも、私はすぐにでき得る一つの方策であろうというふうに思うんです。

 抜本的にはこういうことだけで私は十分であろうとは思いませんけれども、これらについていかがですか。なかなかそれは増員できない、あるいは今申し上げましたように弁護土の任官といっても、今の制度のままでなってくださいと言ってもそれは簡単なことじゃない。いろんな条件整備をするというようなことも少し御検討されてみたらどうですか。いかがですか。

最高裁判所長官代理者
(金築誠志君)
 まず、弁護士任官の関係でございますけれども、委員御指摘のように弁護士任官数がそれほど伸びていないということは事実でございます。

 その原因がどのあたりにあるかということはいろいろな理由が考えられるんだろうと思いますけれども、知り合いの弁護士さんとかあるいは弁護士から任官された裁判官などにいろいろ話を聞いたりしておりますと、まず一つ考えられるのは、弁護士さんを五年、十年とおやりになりますと依頼者との関係が非常に深まってきて、そう簡単にやめて裁判官になるというわけにもいかない。それから、一定期間裁判官をやられて弁護土にまた戻ろうとすると籍がないといいますか、従来の依頼者との関係とか事務所の体制とかいうことで戻りにくいような場合があるんじゃないだろうか、そういう心配がある。そういうことがやはりすぐ出てくる言葉のようでございます。

 それからまた、裁判官と弁護士はもちろん法律家として同じ基盤に立っている、仕事の性質も共通の部分が多い仕事ではございますけれども、やはりそれなりに違うところがあるわけでございまして、裁判官の仕事のうちで相当部分を占める判決起案とかそういう点では、弁護土さんをやっておられてかなり経験がおありになってもそういうことを習熱するのがなかなか大変じゃないか、こういう御心配がある。まだ理由はいろいろあろうかと思いますけれども、そういった点がよく挙げられる点でございます。

 条件整備という点では、最初の判事選考要領は昭和六十三年にできまして、このときは経験十五年以上ということを対象にしておったんですが、平成三年に選考要領を改正いたしまして、経験五年以上の方まで対象を広げたわけでございます。年数もずっととは言わないで少なくとも五年ぐらいやっていただければいいということで、先ほどちょっと御指摘ありました任地などの件につきましてもできるだけ柔軟に考えようと。経験が十五年以上あるようなベテランの方については、できるだけ転動がないような形で居住地とかあるいは周辺とかその辺で考えていきたいということで、できるだけ乗軟に考えるということで任官しやすい環境整備というふうなことは考えて努力してきたつもりではございますが、一層環境整備には努めてまいりたいと思っております。

 それからもう一つ、非常勤裁判官のお話がございました。

 非常勤裁判官というのは一体具体的にどういう制度なのかということがまだ必ずしもはっきりしておらないように思いますので、正確にこれはどうだという評価を申し述べることが難しいと思うんですが、現行法上いろいろな問題点はあろうかと思います。一つは、やはり根本的な問題でございまして、憲法で定められました裁判官の身分保障とか任期とか定年、報酬等の規定が非常勤裁判官という制度を予想しているのかどうか、そういう問題があろうかと思います。それから裁判所法五十三条二号で兼業禁止の規定があるわけでございますけれども、こういうものも、フルタイムの裁判官制度を前提として例外的に兼業許可対象として、例えば大学の非常勤講師のように裁判官の職務と両立する、支障を来さない程度のものを考えているんじゃないか、そういうことが考えられるわけでございます。こういった点について十分慎重に検討する必要があるんじゃないか。

 ただ、もちろん非常勤裁判官、例えば弁護士さんが非常勤裁判官としてなられるということはいろいろメリットもあろうかと思いますので、司法制度改革審議会が設置されましてこの問題を取り上げるということになりますれば、今申し上げましたような問題点についても検討されるということになると思いますけれども、非常勤裁判官制度が我が国の法文化の中でどういうふうに受けとめられるのか、国民の法的ニーズにこたえるためにはどういう裁判官のあり方が望まれるのか、こういった点についていろいろ実証的な観点からも議論がされるということを期待したいと思っておるところでございます。

千葉景子君  議論されるのを期待するなんということじゃないんです。これまでの裁判官のキャリアシステム、これに単に固執することではなくて、これだけ司法というものがもう批判の的にさらされているわけですから、やっばりそこを抜本的にみずからも風穴をあけていこうという姿勢がなかったら、国民から信頼など受けられるはずがないと思います。むしろ、こういう状態だ、もっと国民に近いところで頑張っていきたいと。だとすれば、例えば制度的には定年制がありますけれども、退職後でも一定の嘱託的な裁判官として人材を活用するということだって、それは制度を変えればできるわけですよ。

 それから、今言ったような弁護士の任官ということでも、やっばり片方にキャリアシステムという確固たる一つの大きなピラミッドがあって、そこに弁護士が入ってこいといっても、それは簡単なことではない。そこを抜本的に変える方向にして、弁護土の中から多くの裁判官という人材を得よう、そういうシステムに変えていこうとか、そういうことを積極的に考えていかなければとてもこれからの時代に対応することはできない。司法が機能しないことになると、むしろ権利侵害がはびこったり、あるいはアンダーグラウンドに潜ったり、そういうことになるわけです。

 そういうことを考えると、私は、きょうこの議論をさせていただいて、いささかがっくりしているんです。何かいろいろと御説明はくださるけれ ども、本当にこの事態に立ち至ってどうしようかという意欲とか、それから本当に必死さみたいなものというのが感じられない。私は大変残念な感じがいたします。少しずつふやしていこうということでこの法律はあるのですから、これ自体はともかくといたしまして、きょうは時間がもう来ますので限られたことしかお聞きできませんでしたけれども、やはり今議論されている課題についてもっと積極的な姿勢をまず持っていただきたいということを私は最後に要請をしておきたいというふうに思います。

 時間ですので終わります。



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