
現在、横須賀市立横須賀総合高校の教諭である岸本隆巳さんが、維新期から近代国
家の構築に活躍した三浦半島の志士たちの生い立ちとその活動奇跡を研究、その成果
を1冊にまとめたものが「もはや堪忍成り難し」として出版されています。
岸本さんがこの本を書くきっかけとなったのは、30年ほど前の「横須賀新報」の
復刻版との出会いだそうで、本書には読者の投稿(「寄書」)も紹介されています。
その内容は教育に関するもので、差別的表現もあえてそのまま記載、判断を読者に委
ねています。しかし、当時の市民の教育観を紹介するだけでなく、1889年の学校
令にまで研究は及んでおり、さすが教育者の面目躍如といったところです。
研究の中心は横須賀新報に登場する「島本仲道」という人物の生涯について記述し
ています。土佐の出身で、明治新政府では司法省に入り江藤新平のもと疑獄捜査で、
井上馨や山県有朋らを追い詰めました。その後、明治6年の政変で下野し、板垣退助
らとともに自由民権運動に参加、国内初めての民権派の代言人(弁護士)結社「北洲
社」を設立し、『 大阪弁護士史稿一続、戦中編』 には「我邦代言代書業務の開祖」
と記されています。
併載には「はみだしッ子 中学生の叫び」と題して、著者やお仲間の体験が綴られ
ています。
印象深いのは「あとがき」に記した岸本さんの思いです。歴史への興味深さとか、
教育の現状や政治への慨嘆が綴られる中、こう記されている部分です。『文部科学省
の検定を受けた学校の教科書と学習指導要領の範囲内では語り尽くせないことに、今
回著述作業をしていてあらためて気づいた。この気づきは私にとってはいささか遅かっ
た。教壇に立つのもあと数年になってしまっているから。
だから、この本は授業で使ってもらい、また、高校生に読んでもらいたく、教科書
の記述や教科書用の参考資料をふんだんに使用した。』
たいへん興味深く、新しい“三浦半島”の発見にもなります。
「もはや堪忍成り難し」
●自由民権秘史 島本仲道と三浦半島の仲間たち
岸本 隆巳 著
叢文社 定価1500円